北米のパトロン:ダンバートン・オークスのロバート・W・ブリス

ダンバートン・オークスというと、音楽好きにはストラヴィンスキーのコンチェルト・グロッソで、現代史好きには国連憲章の草案が作成された実務者レヴェルのダンバートン・オークス会議。

外交官のロバート・W・ブリスが引退後の住居として広大な土地を購入したのだけれど、のちに土地と住居を母校ハーバード大学に寄贈。そうこうするうちに、第二次世界大戦に合衆国が参戦することになって、引退していたブリスは国務省に呼び戻され、国務長官の特別補佐官を務めたらしい。国務省の特別職にあったから、旧邸を国際会議の場に提供する段取りをつけられたのでしょう。

一方、パリ大使館にいた1920年代に当時結婚した妻とともに芸術作品の収集に手を染めて、ハーバード大学には邸宅とともに収集品も寄贈されたらしい。パリの芸術家たちとの縁ができて、ナディア・ブーランジェ経由でストラヴィンスキーに作曲を委嘱できたのは、このあたりのルートからなのだと思われます。

ブリスの経歴は、第一次大戦後に、それまでの欧州社交界にかわって、北米の要人たちが芸術のパトロンになる好例ですね。

「アメリカの台頭」は、決してニューメディアと新体制による大衆化だけではない、と。