○○様
はじめまして。○○様のブログは、関西のクラシック・コンサートからミュージカル、落語、吹奏楽まで、幅広く楽しんでいらっしゃるのが手に取るようにわかって、いつも興味深く読ませていただいております。
ミュージカル、落語、吹奏楽などバラエティ豊かな文化が大阪の美点であると思いますが、興味を持ちつつ実際に足を運ぶことができない(金銭的にも精神的にも)恥ずかしいほど貧しい生活をしておりますので、本当に羨ましく思いながら拝見させていただいております。
わたくしごときのブログを読んでくださっているようで恐縮しております。
さて、そしてブログ上でお問いかけの件ですが、本題に入りますまえに、やや回り道することをお許しください。
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○○様は、大フィル定期会員でいらっしゃると、以前、書いていらっしゃったように記憶しております。
そのような立派な方から、ほぼ名指しに近い形でお声かけいただいたことを驚き、身が引き締まる思いでおりますことを、まず率直に告白させてください。
(追記:その後ブログの過去ログを読み直して、大フィルの定期演奏会に皆勤していらっしゃるとの記述はありましたが、定期会員でいらっしゃるとは書いてありませんでした。失礼しました。
ただ、会員でいらっしゃらないにもかかわらず皆勤していらっしゃるとしたら、投資額から考えても会員以上の、オーケストラにとっては最も大切にせねばならないお客様であると思いますので、以下、ほぼ定期会員と同等かそれ以上の方でいらっしゃる、という前提で、もとの文章は、変更を最低限にとどめてそのまま続けます。)
わたくしごときが申し上げるまでもなく、オーケストラの定期演奏会は会員の方々(もしくは会員と同等かそれ以上に熱心なファンの方々)のご支援によってなりたっているのだと思います。
と申しますよりも、
そもそも歴史に照らせば、音楽を愛する方々が「会」を結成して音楽家を雇い、定期的に音楽会を開催するという、聴衆=愛好家主導の実に民主的な形が近代オーケストラの基本ですから、オーケストラの定期会員様とは、会社で言えば株主の如き存在であると認識しております。
オーケストラは町の顔である、という言い方がございますが、これはまさに、オーケストラが町の志ある方々の心意気によって運営されているからなのだと思っております。
株主としての会員さまならびにファンの皆様の叡知や見識は、オーケストラを良き方向へ導き、逆に、会員さま、ならびにファンの皆様の間にお迷いがあれば、オーケストラは方向を見失ってしまうことになるでしょう。
このように、会員様やファンの皆様にとってみれば、オーケストラの演奏の善し悪しは、いわば、自分自身の姿を舞台上で見せられている(聞かされている)ようなものでございましょうから、お気に召さない演奏を前にして、極めて強いお言葉を発せられるのは、まことにごもっともと存じます。
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さて、しかしながら、
オーケストラにおいて会員様・ファンの皆様のお立場がこのように重大であり、オーケストラにとっては会員様・ファンの皆様こそがご主人様であるとするならば、
ご自身が会員として、あるいは一回券のお客様として出資していらっしゃるオーケストラに関するご不満などは、まず、オーケストラそのものへお出しになるべきではないでしょうか?
オーケストラを運営し、オーケストラで実際に演奏している方々(いわば会員様・ファンの皆様からみれば、あなたさまの部下であり従業員であるような方々)は、
「ミス・トーンの多い楽員をなぜクビにしないのか?」
とか、
「ショパンのような稚拙なオーケストレーションの作曲家をどうして定期演奏会で取り上げるのか?」
あるいは、
「ウィーン・フィルやベルリン・フィルを目指せ!」
といった指令やお問い合わせが、株主たる会員さま・ファンの皆様から発せられましたら、おそらくしかるべく対応が取られるであろうと思われます。
そのようにして、長年、大阪の会員の皆様・ファンの皆様のご意向を受けて運営されてきた結果が、「大フィルは大阪の顔である」という評価なのであろうと、私は考えております。
良いところも悪いところも全部まとめて、「This is Osaka」であり、自分たちの住む町の姿を写す鏡なのであろう、と思っております。
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一方、私は両親ともに九州育ちの「流れ者」であり、オーケストラを外野からあげつらう音楽評論家に過ぎません。せいぜいのところが、オーケストラから時折、曲目解説などを請け負う、「下請け」です。
かろうじて、五分の魂は有しておりますので、
たとえば、ありがたくもオーケストラの会員様あるいは熱心なファンの方から直接お声かけいただき、
「演奏家の評価方法には、どのような考え方があるのか知りたい」
あるいは、
「ショパンのオーケストレーションが同時代の他のヴィルトゥオーソたちよりも繊細である、との解説文は、どのような根拠にもとづくのか?」
とのお問い合わせがございましたら、全身全霊を傾けてご回答させていただく所存ではございます。
その上で、
「やはりあの団員はダメだ、クビを切れ」
あるいは、
「この評論家の言うことは信用がならない。出入り禁止にせよ」
といったご判断が下された場合には、もちろんそのように事態が推移することになるでしょうし、
また、そのような手順を経て、最悪の場合には、私が「無能な書き手」として大フィル出入り禁止になったとしても、(私の人生にとっては重大ですが)「大阪のよりよいオーケストラ文化のために」という大義の前では、ささいなことにすぎません。フリーランスの生活とは、そういうものですから。
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○○様は、オーケストラ音楽のあるべき姿について、明確な意志とご判断をお持ちでいらっしゃるようですので、是非とも、会員様もしくは熱心なお客様としてのお立場にふさわしい手順で物事を進めて、大阪フィルハーモニー交響楽団をお導きいただければと思います。
ひいてはそれが、大阪の文化を支え、発展させることになると思いますので。
大阪の文化は、○○様のような方の双肩にかかっていると言っても過言ではない、と私は信じます。今後とも、どうぞよろしくお願いします。