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大栗裕 : 大阪俗謡による幻想曲、ヴァイオリン協奏曲 他

大栗裕 : 大阪俗謡による幻想曲、ヴァイオリン協奏曲 他

本日は午後からびわ湖ホールでボローニャ歌劇場の「カルメン」があって、夜は大阪クラシックの最終公演で、大植英次の「俗謡」。

「カルメンの死」を見届けてから80分後に「大植英次meets大栗裕」へ立ち会うことは、計算上では不可能ではない(はず)と踏んでいるのですが、本当に実現するかどうか。

おそらく、1961年8月25日の夜に第4回現代音楽祭のジョン・ケージと京都の六斎念仏の両方に立ち会うよりは、実現の可能性がはるかに高いと思いますが……

http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20110801/p1

50年後の9月10日(9.11から10年、3.11から半年が過ぎようとして、ボローニャの客人を迎える立場の"Biwako Hall Artistic Direktor"様がベルリンへ飛び、樫本大進さんや日下紗矢子さんと教会でBenefizkonzertをやった翌日であるこの日)に、自分がこんな挑戦をすることになろうとは。

http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2011-09-08

頑張ります。

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ということで、聴いてきました。「カルメンの死」の10分後には大津駅から新快速に飛び乗り、間に合いました。

リスト「レ・プレリュード」、大栗裕「大阪俗謡による幻想曲」、レスピーギ「ローマの松」というのは、国によっては強い抵抗があって実現できないかもしれない選曲ですが(「レ・プレリュード」のことは会場でも大植さんが自分で言っていて、レスピーギもムッソリーニとの関係が問われることのある人ではありますから……)、いずれも“先代”朝比奈隆さんが好みそうな曲でもあり、吹奏楽ファンを狙い撃ちしているような三曲でもありますね。

(そして大阪フィルは、関電さんとか各銀行さん、といった淀屋橋・御堂筋界隈に自社ビルを構える老舗企業さんのご協力を得て演奏するのがよく似合う。)

ここ数年の定演でしばしば取り上げてきたR. シュトラウスもそうですが、マッチョなイメージのある作品を先入観なしに美しく仕上げる、というのが大植さんの音楽監督としてのラスト・イヤーの基本スタイルになりつつあるようで、大植さんと大阪フィル両方の良いところが上手く出る形なのかな、という気がします。

「俗謡」も、変に煽って弾きとばすようなことをしない、きっちりした演奏。意外に朝比奈さんの演奏のテンポ感に近いところもあったりして、大袈裟に言うと、プレイヤーの個性を活かしつつ越えたところで初代から二代目にバトンが手渡された、みたいな感じがしました。

ここまで丁寧に演奏していただくと、展開部(吹奏楽のコンクール演奏ではカットされる箇所)が「弱い」、あまり上手に書けていないこともわかってしまいますが。^^;;

一方、冒頭の甲高いピッコロをあまり強烈に吹かせないで、むしろ、4拍目の不協和音を、キャンバスに絵の具をぶちまけるアクション・ペインティングみたいに思い切って弾くのがユニークな“二代目”のやり方。こういう風にすると、「和」の響きに、アヴァンギャルドが襲いかかる感じになりますね。

(そして、初演以来の手書きの譜面をこれだけ丁寧に演奏家の皆さんが読み込んで演奏してくださったのを聴くと、大栗裕の作品にも、そろそろ、きちんと校訂した印刷譜が必要かもしれない、とそんなことを思いました。)

なによりも、「俗謡」をお客さんの反応がよくわかる大阪クラシックで演奏できたのがよかったのではないでしょうか。本物の大阪のお客さんは、天神祭のだんじりよりも、「いくたまさん」にヴィヴィッドに反応する。観光的にサーヴェイしただけでは届かない大阪のツボがあるんですね。

ということで、織田作之助原作で生國魂神社界隈が舞台になる新旧の映画

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