大阪って本当に今もまだ「商売人の街」なの?

少し前に騒動になった、「大阪にプロのオーケストラが4つもあるのは多すぎる、統廃合しろ」という話はセンチュリーが大阪府から離れただけで、統廃合は見事不発に終わったわけですが、

考えてみれば、この時期は4つのオーケストラが同じホールで順番にコンサートを開いていたのですから、実は「競合」してなかったんですよね。

複数のオーケストラの定期会員を兼ねる人は少ないかもしれないけれど、それ以外でお客さんを奪い合う関係になる局面は実は少ないし、新しくできた兵庫芸文のオーケストラが定期を昼間に設定したのは、その意味でも今思えば好判断だったことになりますね。昼間PACを聴いて、夜は大フィル、とか、不可能ではないし、実際にそういう人もいますから、これも「競合」はしていない。

むしろ時間が重なって、お客さんを分け合う形になるのは演奏団体ではなく、「箱」のほう。

もし、音楽ホールが他との「競争」とか「取り合い」を表に出すと、それは本当に仁義なき戦いになってしまうかもしれないし、でもそんな毎日顔つき合わせている人とケンカするのは大変だし、当事者だってやりたくないでしょうから、普通はそうならないような何らかの工夫をするのだろうと思う。

それができないとしたら、きっと自分たちだけではどうにもならない外的な事情がある場合でしょうね。よそから人を呼んでいて、その人がどうしてもこの日じゃないとダメだ、とか。

逆に言うと、人をよそから呼ぶことが多い状態が続いている場合、人を手配するエージェントに生殺与奪の権利を握られることになる、ということでもある。複数の場所に、それぞれがバッティングしないように上手にスケジュールを組んで人を呼んでくれればいいけれど、他と敢えてぶつける、とか、その気になればできるのかもしれないし、逆に、あまり考えずにどんどん人を送り込むと、気づかないうちに現場を苦しめるかもしれない。

そしてこういう構造が発生した場合には、しばしば、「地方の悲哀」みたいな図式で理解されることになっているわけですが、どうなんですかね。

それを言い出すと、最近は「日本は戦後、実はずっとアメリカの属国だった」論が、ほとんど言うまでもない水か空気のような当たり前であるかのように公然と言われる世の中になっているわけですが、それならそれで、圧倒的な不均衡が当面続くんだったら、その枠組みのなかで、全部言いなりじゃつまらんから、何かできないものか、とか、そっち方向へ知恵を働かせるものだろう、とも思う。

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で、前から気になっていることがあって、大阪は「商売人の町」だと言うけれども、徳川期のはじめのほうで幕府直轄領になっているし、その前は秀吉がいて、さらにその前は本願寺があったわけだから、かつての堺のような自由都市だった時代はないんですよね。

政治的に、二度と豊臣みたいのが復活しないようにがっちり押さえられたなかで経済に特化した、ということなのだと思います。

そして今どうなってるかというと、最近の世の中は政治=経済なので、経済の領域というのは、むしろ不自由なわけじゃないですか。官僚さんのなかの一番優秀な人が財務をがっちり管理していて、大学行政だって、先生たちが慣れない書類書きで忙しいのは、結局、お金の部分を管理されて、身動き取れなくなってるわけでしょう。

気楽に生きたいバカ(含む、わたし)は、お金の問題はとりあえず死なない程度のやりくりができればいい、ということにして、お金絡みじゃないところでなんか面白いことやる/考える、という風に方向転換しないと、無理なんじゃないすかね。

つまり、大阪に向かって、「経済の復興/浮揚」みたいなことを言ってくる人がいたら、今の情勢では、たぶんそれは九分九厘、罠だと思ったほうがいい。

どうもそういうことのような気がします。

アメリカが一人勝ちな経済万能の世界、みたいなことになっているときは、「商売人の街」という、どう考えても将来性のない看板をさっと外すくらいの変わり身のほうが、むしろ、進取の気概なのかもしらん、と思うんですわ。

なんか、やり方があると思うんですよね。

(私個人としては、ますます、お芝居方面に関心が向いていて、実はこれは、当たらないものには未来がない世界ですから、シビアな商売というのと少なからず重なるところがありつつ、でも、それとズレるところもありそうで、そこが面白いんじゃないかと思う。しかも、バレエが妙にさかんだったり、舞台といっても近代のストレート・プレイではない変なものが関西には色々ありますよね。それが気になる。それこそ、四天王寺の舞楽とか、そんなんまで現役でやられ続けているわけで。セントラル・ステーションの駅ビルのなかで朝からオペラが見られる、というのは、その意味でも、なんかすごくいい話のような気がするのです。→参考:http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20131028/p1 マチネ・コンサートはあるけど、午前中って、現状ではコンサートがまったくない時間帯ですからね。ライヴを朝からやろうとすると色々難しいとは思いますが、映画はできるんですよね。でも、コンサートだって、大人数を集めるのじゃないタイプのものだったら、朝やってもいいんじゃないだろうか。ジョン・ケージとか、意外に朝が合うんじゃないか。)