オペラあってのオーケストラ

高校生の頃、大阪フィルに入った吹奏楽部の先輩が「今はオペラに興味がある」と言って、家に行くとずっとオペラのLPをかけていた。1983年、朝比奈隆が関西歌劇団のオペラから手を引く前後の頃だと思う。

それまでずっと関西歌劇団のオペラ公演は大阪フィルがピットに入っていたわけだが、当時20代だった若手奏者がもう60過ぎですから、そろそろ大阪フィルには、オペラやバレエのピットで定期的に弾いていた時代を知っている奏者がいなくなる、ということですね。

朝比奈隆は、関西でオペラやバレエをやるためにオーケストラを作った、と見て良いと思いますが(そしてシンフォニーの指揮者としては最後までいまいち信用されていなかったわけですが)、兵庫芸文の佐渡裕のチームも、年1回のオペラをやるために(自前でオペラをやって採算がとれるようにするために)ユース・オケを作ったんだと思う。

滋賀では、沼尻竜典がワーグナーで京響、モーツァルトで日本センチュリーというように上手くオケを使い分けながら「劇場を回している」と言える状態になっていると思う。

一方、大阪には劇場がない。

朝日新聞社に劇的な社内革命が起きて、フェスティバルホールが本格的なオペラ・音楽劇経営に乗り出す、というようなことでも起きないかぎり、大阪はしばらく沈んだままなんでしょうね。

(京都のローム・シアターをみていても、この種の多目的ホールが音楽劇を経営の軸に据える、というのは、さすがにちょっと難しそうだし。)

大阪に万博誘致を目指すんだったら、そこにのっかって、万博記念劇場構想をぶちあげる、そういうパワフルな文化人がいたら面白いかもしれませんが、誰かそういうことができそうな人、いますかね。