2016-12-26から1日間の記事一覧

音楽家の宮廷政治と哲学者のイデオロギー批判、強いのはどっち?

ワーグナーのくだりは、宮廷に深く食い込んで劇場を建ててしまった音楽家(思えば上田城を徳川に作らせた真田のようだ)と、彼に粘着するニーチェ(ポストモダンの源流のひとりかもしれないイデオロギー批判の人ですね)では、政治力が雲泥の差である、とい…

教養を財産で補うこと

書き出しの文体が仰々しく、このテンションで最後まで保つのか心配になるが、序章の最後で話者は正気に戻って本書の構成などを平熱で説明する。続けて政治史を丁寧におさらいするあたりから、カルスタ/ポスコロ的なイデオロギー論ではないドイツ音楽・ドイ…

manualな音楽:三輪眞弘の声のプラトニズム

三輪眞弘は、生身の人間による「音楽」と身体を通さない亡霊としての「録楽」の区別ということをしきりに言うけれど、彼の作品をまとめて聞くと、彼の言う生身の人間は絶えず手を動かしている。生身の人間とは手を動かす存在であり、自らの手を動かすことの…