2015-03-01から1ヶ月間の記事一覧

GOTO文と繰り返し処理:「パソコン史観」の夢を見た

私には親にポケコンを買ってもらって遊んだ体験はないが、80年代のポケコンはBASICで自分でプログラムを入力しないと何もできない、素のコンピュータだったらしい。BASICは、Windows のコマンドプロンプトで触った。マシン語と言って、ハードウェアが理解で…

大作曲家の私生活と雑用の研究

音楽学会の機関誌が届いて、シューベルト論文の参考文献で彼の交友関係、いわゆる Schubertiade の面々についても調べが進んでいることを知る。そういえば、学会誌とは関係ないが、シューマンについて、彼の著作集が、NZ の編集人としての業務がどういうもの…

モーメント:引き合う力、あるいは時空の歪曲

「マキァヴェリアン・モーメント」というなんとも魅力的な言葉を知って以来(http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20150324/p2)、モーメントについてずっと考えている。とりあえず物理、力学だろうということで、むかし教わった気がするけれども全く理解できな…

自然哲学に学ぶ

科学哲学の冒険―サイエンスの目的と方法をさぐる (NHKブックス)作者: 戸田山和久出版社/メーカー: 日本放送出版協会発売日: 2005/01メディア: 単行本購入: 20人 クリック: 134回この商品を含むブログ (136件) を見る「科学的思考」のレッスン―学校で教えてく…

「進歩史観」?

「進歩史観」って何なんだ、の件。わかってしまえば大山鳴動……の観があり、アホらしいので結論だけ書く。 (1) 啓蒙と歴史の発展段階論歴史の「進歩」云々は、キリスト教と対決して世俗の啓蒙された歴史観を確立する困難に関わるようだ。そうかといって17、18…

対決

センチュリーvs関西フィルの対決第2弾。先攻さんは、関西フィルが最近見違えるようにいい音になったことをはっきり確認させる引き立て役になった印象。前者のペトルーシュカがノーミスを目指すストップ・アンド・ゴー、まるで吹奏楽コンクールみたいな演奏に…

「音楽の国」か「演劇の国」か(吉田寛『“音楽の国ドイツ”神話の系譜学』シリーズ:まとめ)

本編3冊のほかに、ワーグナーを論じた結論部分が独立して先に刊行されており、計4冊の大きなプロジェクトである。 “音楽の国ドイツ”の神話とその起源―ルネサンスから十八世紀 (“音楽の国ドイツ”の系譜学)作者: 吉田寛出版社/メーカー: 青弓社発売日: 2013/…

19世紀ドイツ・オペラと混合趣味

これは本への批判ではなく、改めて読み直して考えたこと、すぐ何かができるわけではない自分自身への宿題のつもりで書くのだが、 ヴァーグナーの「ドイツ」―超政治とナショナル・アイデンティティのゆくえ作者: 吉田寛出版社/メーカー: 青弓社発売日: 2009/1…

人文科学技術としての古典精読(津上英輔『メーイのアリストテレース『詩学』解釈とオペラの誕生』)

メーイのアリストテレース『詩学』解釈とオペラの誕生作者: 津上英輔出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2015/02/21メディア: 大型本この商品を含むブログ (1件) を見る アカデミアと劇場、ということで言えば、アリストテレスがギリシャ悲劇を主として詩作(…

Allgemeine / Zeitung

ふと思ったのですが、allgemein が universe、完全無欠な円に比される普遍を意味するのだとしたら、temporal な俗世の「今」を報じる Zeitnung が allgemein を名乗る18世紀から19世紀のドイツのジャーナリズムは、subjektive Allgemeinheit に近い態度(ア…

共和主義者は決断する(ジョン・G.A.ポーコック『マキァヴェリアン・モーメント』)

マキァヴェリアン・モーメント―フィレンツェの政治思想と大西洋圏の共和主義の伝統作者: ジョン・G.A.ポーコック,John G.A. Pocock,田中秀夫,奥田敬,森岡邦泰出版社/メーカー: 名古屋大学出版会発売日: 2008/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 41回この…

十字架と三色旗の彼岸

宮廷画家ゴヤは見た [DVD]出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント発売日: 2009/04/22メディア: DVD クリック: 24回この商品を含むブログ (32件) を見る 『十字架と三色旗』を読んですぐにフォアマンの映画を思い出したのですが、DVDをみた…

補遺の補遺:神格化

神話が好きな人たちとはつきあいきれない、と調べれば調べるほど思ってしまうのですが、伝説 legenda が語り継ぐ人物は偉人 a great man であったり聖人であったりする一方で、神話の世界には英雄 hero ἥρως が登場するわけですね。で hero って何だとあれこ…

補遺:神話と伝説

上のエントリーで書き漏らして、でも、別途メモしておきたいことを短く簡単に。話法としての神話(mythos)については、バルト「神話作用」が有名ですが、もうひとつ、話法としての伝説(legenda)というのもありそうな気がします。記録 chronicle に記載さ…

ゼロ年代の mythos 話法

49歳の手習いが続く(笑)。 - 大栗裕が、天の岩屋戸の物語による音楽をまず吹奏楽のために書いて、次に管弦楽編曲したときに、邦題は「神話」、欧文タイトル(朝比奈隆が大フィル定期で初演したあとヨーロッパに持っていった)は「Legend」としていたのを思…

「男文字は怖い」

先日21日は午後からびわ湖ホールの小澤征爾塾で「子供と魔法」をみて、夜は大急ぎで移動して、兵庫芸文で「藤戸」。藤戸公演はプレトーク30分、公演1時間という構成で、トークは聞き逃しましたが、公演には間に合った。シンプルな舞台で、前半、佐佐木信綱が…

若き同時代人の「肩に乗る」

……というようなことを考えたのは、ベートーヴェンの晩年のAs-durのソナタ(op.110)がウェーバーとか初期のシューベルトのように響くのはどういうことか、と改めて考えたからです。E-dur(op.109)の最後は変奏曲で、As-durの最後はフーガなので、後者のほう…

ブックフェア希望

国民国家とナショナリズム (世界史リブレット)作者: 谷川稔出版社/メーカー: 山川出版社発売日: 1999/10メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 34回この商品を含むブログ (11件) を見る 吉田寛『“音楽の国ドイツ”の系譜学』シリーズ第1巻の序章は、ナショナリ…

ホルストはオタクである

大英帝国の首都ロンドンの女学校教師 → 世界のすべてが手に入る情報集積都市のインドア系中間層、思想的にはおそらく穏健・中道だが、後年かなりスピリチュアルに傾いたらしい パリ直輸入の現代音楽コンサートに通うのが趣味 → これぞまさしくデータベース消…

歴史と神話、ドクサとクイズ

[追記:神話と宗教を同一視してはいけないと思い直したので、いくつかの箇所で表現を書き改めています。]歴史関係で疑問が沸いたら山川出版社(創業1948年、戦後の会社なんですね)。 歴史意識の芽生えと歴史記述の始まり (世界史リブレット)作者: 蔀勇造出…

モーツァルト主義者ブラームス

ヘッセン放送のライブ映像。今や東京の指揮者(なんだかサッカー日本代表監督就任に似た歓迎のされかたですよね)になったヤルヴィとの共演は、立ち居振る舞いから何から先日の来日公演とそっくり同じで、色々考えさせられますが、第2楽章の最初のところは、…

「読譜する公共圏」

バッハ(晩年は自費出版にご執心)、ベートーヴェン(悪筆で自筆を他人が読めない)、ブラームス(未出版手稿を慎重に破棄)、いわゆる三大Bの楽譜出版重視の姿勢は偶然ではないかもしれない。シューマンは何をどういうタイミングで出版するか、相当考えて…

学者の二枚腰(小田中直樹『歴史学ってなんだ?』)

歴史学ってなんだ? (PHP新書)作者: 小田中直樹出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2004/01メディア: 新書購入: 6人 クリック: 42回この商品を含むブログ (70件) を見る 長年腑に落ちなかったある種の書物の読み方がわかったような気がするので、小田中直樹『…

追っかけ?

月の初めにヒラリー・ハーンを聴いて、その次が河村尚子で、今度は小菅優。私はどこへ向かおうとしているのだろう。こういう日程になったのは、女性の皆様がしめしあわせたわけではないと思いますが、「しめしあわせる」というような語彙が思い浮かんでいる…

……

(相手が反撃してこないことを見越したうえでのマウンティングの快楽を謳歌する時代は終わった……と信じたい。)とSNS風に短くつぶやいてみる。束の間の安心に過ぎないのだろうけれど。

「序列化する欲望」

結局われわれは「分類すること」への欲望からは逃れられない。そうだとすれば、問題は、序列化なき分類は可能か、すなわち「序列化すること」への欲望を制御する具体的な方策を考案できるか否かにある。(小田中直樹「思想の言葉 東アジアの西洋史学と「グロ…

神話の現状

“音楽の国ドイツ”の神話とその起源―ルネサンスから十八世紀 (“音楽の国ドイツ”の系譜学)作者: 吉田寛出版社/メーカー: 青弓社発売日: 2013/02メディア: 単行本 クリック: 40回この商品を含むブログ (9件) を見る さっきはじめて、第1巻の序章を通読した。序…

歴史哲学と劇場の世論

フォルケルのところで、いきなり「進歩史観」の語が出るとぎょっとするが、我慢して読み進めると、「音楽におけるドイツ」の史的展開とでも呼ぶべき論考に歴史哲学をどう絡めるか、ということであるらしいとわかってくる。一般的な説明……というかダールハウ…

identify as a universe

http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20150315/p2↑の続きで、まず宮本さんの教養としての音楽の本を読み直して、そこではAMZに至る18世紀のunivesal/general/allgemein概念のある種のヤバさへの直接的な言及がないらしいことを確認したうえで、三巻本のはじめの…

ポリフォニックなピアノ

シャコンヌ(バッハ/ブゾーニ)と渋いセレクションのショパン、これも渋いセレクションのラフマニノフのプレリュードで最後はプロコフィエフの6番のソナタ。さらにアンコールでシューマン/リスト「献呈」。単なる「美し系」ではなくエッジの効いた音で、…