- 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
- 発売日: 2009/04/22
- メディア: DVD
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『十字架と三色旗』を読んですぐにフォアマンの映画を思い出したのですが、DVDをみたのは、2011年の終わりだから、もう3年以上前ですね。
http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20111220/p1
見直すと、やや違う感想を持った。
スペインで異端審問を復活させてしまうくらいの十字架のパワーが三色旗のナポレオンの侵攻でひっくり返って、王政復古でさらに反転するのは、谷川先生の本そのものですし、
十字架と三色旗―もうひとつの近代フランス (歴史のフロンティア)
- 作者: 谷川稔
- 出版社/メーカー: 山川出版社
- 発売日: 1997/11
- メディア: 単行本
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教会が不祥事をもみ消そうとするところはSTAPの研究所を思わせる。
フォアマンが教会に自分の生まれ故郷チェコの共産主義、フランス革命政府に亡命先アメリカの資本主義を重ねて、どっちもクソだ、というスタンスで作っているからこうなるのだと思いますが、
でも、映画のなかでナタリー・ポートマン(二役)が数奇な運命に翻弄されることになるのは、徹頭徹尾、風見鶏なエロ神父のせいなんですね。
イデオロギーズは力関係でオセロゲームのように白黒反転し続けるし、監獄と精神病院に代表される制度は、人間を疎外して稼働して、個人の意志ではどうにもならないことを次々引き起こしますけれども、
具体的に「この私」がどうしてこうなっているか、ということにフォーカスすると、「あいつがあのとき、こういうことをした」という具体的な行為の連鎖が浮かび上がる。(映画では、妊娠して子供が生まれるのは、個人と個人の関係・出来事以外ではありえないこととして扱われている。)
こういう風に観客が感情移入できる個人を中心に筋を組み立てるのが物語映画の定石だ、とも言えますが、
大状況としてのイデオロギーや制度と、小状況としての個人・家族、と言ってしまってはいけないような気がします。
ラストシーンは、本当の娘がどっかへいなくなっちゃって、子供の父親は悪行が祟って死刑になって、その死体が荷車で運ばれる酷い場面ですが、
あの娘はどうなっても必ず生き延びるだろうと思わせる描かれ方だし、ナタリー・ポートマンが拾ってきた赤ん坊を抱いて荷車に付き添って歩く後ろ姿は「家族水入らず」風なんですよね。夫は死んじゃってるし、母と赤ちゃんに血のつながりはないけれど、これをひとつの家族として肯定しよう、という感じなんですよね。
これは、何と呼べば良いんでしょう。
テリー・イーグルトンだったら、この肯定する力こそが religion だ、と言うのでしょうが……。
- 作者: テリー・イーグルトン,大橋洋一,小林久美子
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2010/05/25
- メディア: 単行本
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