2015-01-01から1年間の記事一覧

業務用寄贈録音と私用所蔵録音の区別: 音楽家のアマチュア指導とは何であるか?

上の話と緩やかに関連するが、大栗裕はどうやらオープンリールテープをほとんど自分で購入していないことに気付く。カセットテープ登場前はオープンリールでラジオのエアチェックをやっているが、これはほとんどが寄贈されたテープの使い回し(上書き重ね録…

音楽家の Work の範囲

作曲家の作品目録にはその人物が自らの「作品」として書き残した楽曲をリストアップすることになっているわけだが、大栗裕の作品目録をまとめるときには、歌劇「赤い陣羽織」とか、吹奏楽のための神話と並べて、「関西学院大学マンドリンクラブ第42回定期演…

黒の階調:木之下晃

ヨドバシでカメラ書籍の棚をながめていたら、木之下晃に遭遇してしまった。 モノクロ写真塾―モノトーンの表現力と黒白写真の魅力を再発見する (日本カメラMOOK)出版社/メーカー: 日本カメラ社発売日: 1994/11メディア: 単行本 クリック: 6回この商品を含むブ…

大フィル戦後70年三部作

たとえば、今年の11月から12月にかけて、戦後70年絡みで大フィルがほぼ1週間おきに信時潔「海道東征」、アールトネン「ヒロシマ交響曲」、ショスタコーヴィチ「レニングラード交響曲」を演奏したのは、上の話の一例になるかもしれない。3つ並ぶと色々なこ…

ダイナミックレンジ

CDに記録できる周波数帯域はアナログ・レコードより狭いことが知られていて、「だからこれからハイレゾだ」ということのようだが、写真の場合も、デジカメの画素がオーバーフローせずに記録できる光の下限と上限、とりわけ上限はフィルムより狭いらしい。そ…

『聞こえくる過去』

聞こえくる過去作者: ジョナサン・スターン,中川克志,金子智太郎,谷口文和出版社/メーカー: インスクリプト発売日: 2015/10/16メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 未だに腰を据えてじっくり読む時間がないのだけれど、先日、あらすじを駆け…

デュポンのライターの開く音と閉じる音

オーディオ器機からカメラ、貴金属というように、大栗裕とともに「昭和の男のアイテム」を振り返るサイトになりつつあるが(笑)、遂にデュポンのライターである。ちょっと前まで、ドラマで福山や織田がカッコつけて、「キーン」「シュポッ」とやっていた、…

「造幣局製」

ようやく大栗文庫のオープンリールテープの中身の確認が終わって、2009年から足かけ6年かかった作業が形になりそうなのだが、やることは他にもある。大栗裕は生前に大阪府芸術賞を受けて、没後、第1回吹奏楽アカデミー賞作曲賞を贈られているが、遺品のには…

経済大国の運命

岡田暁生『オペラの運命』を再読。2001年にフィッツカラルドと共振しながら「バロック的」な祝祭と浪費の末路を語るのは、バブルな経済大国ニッポンへの鎮魂歌だったんだな、と今更ながらに気づく。

ドラムスとパーカッション

西洋のオーケストラでは、歴史的な経緯からティンパニーはその他の打楽器とは違う役割が与えられている。20世紀のポピュラー音楽でドラムスがその他の打楽器と違った存在になっていくのは、なんとなく似ている、というだけでなく、何らかの具体的な関連づけ…

録音の「露出」

F値だの露出だのシャッター速度だのISO感度だのという語彙を中途半端に覚えると嬉しくなっちゃって、オーディオ(音響再生産技術ですか?)を巡る語彙の数々(ダイナミックレンジだとかS/N比だとかマイクの指向性だとか)は、カメラ用語のどれかと一対一で対…

track number / session / piece と work

track number とは何か?映画フィルムの「サウンドトラック」とか、磁気テープの「2チャンネル4トラック」とか、というのと、LPやCDの「トラック番号」では、track の語の意味合いが少々違っている気がするけれど、どういう風になっているのか、少し考えて…

パリと私、老人と青年

今月の京都新聞の批評(ブルガリア国立歌劇場のトゥーランドット)は14日夕刊、パリのことが大きく報じられている紙面に掲載されたようだ。(あれが決行されたのは13日の金曜日だったんですね。)日経ではコンセルトヘボウ(ユジャ・ワンがチャイコフスキー…

正対

カメラを被写体と正確に正対させたいときには鏡を置いたらいい、というのは、カメラマンさんのTipsらしい。別にベラスケスとフーコーだけが知っているエピステーメーの奥義というわけではないようだ。(障子を歪みなく正面から撮る日本映画の撮影所って贅沢…

大栗裕と芸術祭

[追記: 合唱組曲「彼」の作曲年が間違っていたので直した。]大栗裕の芸術祭参加作品は3つあるが、 昭和36(1961)年文部省芸術祭音楽部門 交響管弦楽のための組曲「雲水讃」(朝日放送) 昭和38(1963)年文部省芸術祭音楽部門 ヴァイオリン協奏曲(毎日放…

「ウォークマン猿」再考: モノラル/ステレオ/モノクローム

話が入り組んでいるらしいことがわかってきたので、基本的なことをまとめてみた。 1950年代以前「ニューメディアのモダニズム」レコード、ラジオ、映画の音声はすべてモノラルだった。(のちに順次実用化されるステレオ音声技術は、いずれも試験段階に留まっ…

大栗文庫移転のお知らせ

大阪音楽大学付属図書館 http://www.daion.ac.jp/about/library/a5a6tu000000bcwx.html (もしかすると、うまく開かないかもしれません。大阪音大図書館ページが開いたら、そのページの左側のメニューに「大栗文庫」へのリンクがあります。) 大阪フィルハー…

正方形の写真

カメラの歴史は、レンズの特性を説明するのに幾何的な作図付きで光学が要るし、焼き付け・現像は化学反応で、初期の写真家は化学薬品の専門家でもあったようだし、もちろん機械製造のプロジェクトX的な工学の話にもなる(ドイツのライカvsコンタックスとか、…

全巾・半巾/Mono・Stereo

放送局がオープンリールテープのケースに添えたデータシートは、「19cm/s・9.5cm/s」「全巾・半巾」「Mono・Stereo」というようなチェック項目があったりする。オープンリールの録音方式が色々あって、それでこういうことになっているようだ。 1トラック1チ…

大栗裕の自筆譜展示

大阪音楽大学ザ・カレッジオペラハウスのロビーに長らく付属図書館大栗文庫の資料が展示されていましたが、同文庫の移転を機に展示が更新されました。明日11/1のファルスタッフ公演など、オペラハウスご来場の際にお立ち寄りください。

フィルムとテープ:35mm帝国主義とその周辺

カメラの話で、やたらと「35mm換算」という話が出てくると思ったら、映画のフィルムと同じサイズ・規格のフィルムを1コマ35mm幅で使うのが事実上の標準になっていたんですね。単なる私の無知ですが。(映画のコマと写真のコマは縦横が90度回転しているから、…

「カメラの国ドイツ」

日本写真史 上 - 幕末維新から高度成長期まで (中公新書)作者: 鳥原学出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2013/12/19メディア: 新書この商品を含むブログ (8件) を見る 趣味のカメラといえば、かつてはなんといっても「ライカの国ドイツ」であったらしい…

海の時代、川の時代、山の時代

大栗裕がだんじり囃子(大阪俗謡による幻想曲)や阿波踊り(ヴァイオリン協奏曲)の和製ニューリズムで踊っていた昭和30年代は「海の時代」(だんじり文化圏は瀬戸内海から大阪湾の沿岸地域に広がっているらしい)。枚方に住んで、宇津木秀甫の協力で淀川水…

歴史の必然?:どのような転機が聞こえくるのか?

ある現象の来歴をつまびらかにすることは、その現象が必然であるか偶然であるかの判断には関与しない。そして歴史に「必然の法則」がある、という主張はほぼ科学ではなく信念だと思う。The Audible Past という書物にある時期の日本のある種の知識人(比較的…

聞こえくる大大阪

宮原禎次「大大阪」(1940)が2010年に本名徹次指揮大阪センチュリー響で再演された、というのは、「よみがえるラジオ歌謡」というNHK大阪制作の番組の公開収録ですね。このあと東京に戻って、吉田秀和「音楽のたのしみ」の最後を看取ることになった西川プロ…

S/N比:信号の増幅

大所高所からの大学論はともかく、録音技術実習めいた日々が続いている。オープンリール、カセットの次はLPレコードである。これもほぼ忘れてしまっていましたが、Universal Serial Bus (USB) でなんでもつなげてしまえる今時のコンピュータのデジタル信号送…

太閤園

今日教えてもらったのだが、貴志康一の網島の生家は現存しないけれど、父奈良二郎の作った茶室が残っていて、これが現在は大阪市から隣接する太閤園に所有者が移り、「桜苑」という結婚式場を使うと見ることができるらしい。(旧貴志家の茶室の土地を大阪市…

ドラマと採譜

1960年代の音楽で「採譜」と聞くと、音楽学者は有り余る教養(笑)が邪魔をして過剰反応してしまったりする。阪大音楽学で山口修門下だったりするとなおさらであったりするようだ。最低でも小泉文夫やチャールズ・シーガーを思い出しちゃうわけですね。でも…

カセットテープの普及時期

カセットテープをあの規格で最初に作ったのはフィリップス(1962年)で、1965年に特許が無償公開され、1966年にはTDK(東京電気化学工業だからTDKなんですね)が日本で初めて製品化、カセットといえばTDKという感じになっていたように思うのだけれど、本格的…

addiction

ゲームサウンド制作ガイド ―インタラクティブな音楽のための作曲技法 (GAME|DEV|LAB)作者: Winifred Phillips,竹内雅樹,宮崎空出版社/メーカー: オライリージャパン発売日: 2015/08/26メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (4件) を見る 「…