2015-04-01から1ヶ月間の記事一覧

「お守り言葉」

理不尽な進化: 遺伝子と運のあいだ作者: 吉川浩満出版社/メーカー: 朝日出版社発売日: 2014/10/25メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (64件) を見る 進化論でダーウィンの周囲にラマルクとスペンサーを置く、という構図で、期待したほど…

存在価値

http://osakaphil1947.blog66.fc2.com/blog-entry-985.html

承前:ヴォーカロイドは自分の声を聞かない

で、上のエントリーの続きになるが、ヴォーカロイドさんは、ニューメディアが築き上げてきた「主体なき声」の到達点である、という風な議論をかぶせることでゼロ年代の歌姫として盛り上がったわけだが、「彼女」(なぜか若い女性の声ばかりが受ける)は、自…

「声の影」

ダールハウスは、19世紀以後の「絶対音楽」との対比で、「かつて器楽は声楽の影であった」という言い方を好んで使った。声・言葉を不可欠の要素としてもっている声楽が十全な音楽で、肝心の声・言葉を欠いた器楽は、音楽の姿形を地上に投影した平べったく灰…

チャールズ・ローゼン『音楽と感情』

音楽と感情作者: チャールズ・ローゼン,朝倉和子出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2011/12/23メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 先の天皇の誕生日も半期15回を確保するために大学へ行くわけですが、今年はローゼン『音楽と感情』をちゃ…

一線を越える

音楽団体の創立○○周年というと、「皆様のご愛顧のおかげでここまで来ました」と舞台の上からお客様にご挨拶するスタイルが定番だが、とある音楽堂が創立○○周年に各所へ頒布している文書を読むと、「出資者の皆様、観客は今このように考えており、有識者はこ…

まとめ:開発と表象(『表象〈09〉:音と聴取のアルケオロジー』)

「表象文化論」という言葉は、なんとなく東京ならではのような気がするのだけれど、そういえば、「表象(ひょーしょー)」と「東京(とーきょー)」は語呂がよく似ている。どちらも母音は「お」しか出て来ないし……。だからどう、ということではないが、そう…

ストラヴィンスキー in 大阪

私も外山さんが登場して指揮台に立った瞬間とようやく気付いたのだが、どうやらやっぱり誰も指摘していないらしい。1959年、第2回の大阪国際フェスティバルにはストラヴィンスキー自作自演(N響)があって、東京公演はNHKの映像も残っている。火の鳥組曲もや…

承前

そういう意味では、「芸術音楽は敷居が高すぎる」というのはイメージに引きずられ過ぎた見方であって、ぼちぼちやっていける規模を見極めるのが肝心なのかもしれない。変に事業拡大を夢見ると、妙な人たちにつけこまれる。いい具合の事業規模で、気持ちよく…

事業規模

クラシック音楽で一番事業としての規模が大きいのはオペラで、欧米の本式の劇場だったら演劇より一回り大きな事業だと思うけれどそれでも映画とは事業としての桁が違う。クラシックとは動いているお金の額が違うはずのポピュラー音楽(レコード産業)を考え…

「武士の一分」

日本政治思想史―十七~十九世紀作者: 渡辺浩出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2010/03メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 41回この商品を含むブログ (26件) を見る こういう構図にすると、武士の生態を思想史として記述できるのか、と感動した。鎖国…

本当は強くなかった絶対王政

全体を見る眼と歴史家たち (平凡社ライブラリー)作者: 二宮宏之出版社/メーカー: 平凡社発売日: 1995/11メディア: 新書 クリック: 5回この商品を含むブログ (9件) を見る フランスのアンシャン・レジームの王権・官僚制が絶大な支配力で民衆に届いていたとは…

共同討議「聴覚性の過去と現在」(『表象 09』)

ひとまず、メモを取りながら通読した。「音楽」学が、民族音楽学or音楽人類学やポピュラー音楽研究の充実を経て、対象領域を音楽 music から拡張する動きが20世紀からずっとあって、musics (複数形)とか musiking (動詞化)とかのダジャレ的微調整案から…

中綴じ・平綴じ・糸かがり

国文学の方は、和本にふれて巻子とか粘葉装とか袋綴じとか、そういう言葉を知るのだと思いますが、そうじゃない場合でも、本を作るとなると、編集者さんと製本のことまで相談したりするものなのでしょうか?製本では、折丁とか、丁合をとる、といった和本伝…

「鎖国による日本の遅れはせいせい30年程度」

俺の日本史 (新潮新書)作者: 小谷野敦出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2015/04/17メディア: 新書この商品を含むブログ (9件) を見る 18、19世紀のヨーロッパの内実がどの程度であったか、という側から考えても、著者の査定に同意できそうな気がする。維新と…

切断と修復 「聴覚文化論」と関西の音楽人類学

表象〈09〉:音と聴取のアルケオロジー作者: 表象文化論学会出版社/メーカー: 月曜社発売日: 2015/04/14メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 巻頭の聴覚文化論をめぐる討論は、長くて内容が多岐にわたるので、まだほんの入り口のところしか読…

「音楽の国」と移民

https://twitter.com/H_YOSHIDA_1973/status/586200369195286528https://twitter.com/H_YOSHIDA_1973/status/586201100195393536「音楽の国」としてのドイツはユダヤ人にもスラブ人にも開かれていたが、「演劇の国」はそうではなかったのではないかという仮…

「「情報格差ビジネス」はもう要らない」

「成功事例を皆に伝えるため」という大義名分で行われる、さまざまな行政の施策が実はその地域の負担となり、長期的にはその活動を衰退させていくことになりかねないのです。 なぜ「地方の成功事例」はつぶされるのか | 地方創生のリアル | 東洋経済オンライン…

音楽における「県」と「市」

上で書いた「市町村は藩の後継、都道府県は国の出先」という区別で考えると、兵庫と滋賀に立派な音楽堂があるのは、新国立劇場設立と連動した「国の政策」を県が実現している形になる。一方、京都でこのところ評判がいいオーケストラは「市」が作った団体で…

藩と市町村と都道府県

科学アカデミーと「有用な科学」 -フォントネルの夢からコンドルセのユートピアへ-作者: 隠岐さや香出版社/メーカー: 名古屋大学出版会発売日: 2011/03/07メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 87回この商品を含むブログ (26件) を見る この本は本当に読みが…

スキャナの目

富士通 FUJITSU ScanSnap SV600 (A3/片面/オーバーヘッド読取方式) FI-SV600A出版社/メーカー: 富士通発売日: 2015/02/06メディア: Personal Computersこの商品を含むブログ (5件) を見る 先週から部屋に籠もって一日中スキャナーという仕事がはじまっている…

科学は苦い

科学アカデミーと「有用な科学」 -フォントネルの夢からコンドルセのユートピアへ-作者: 隠岐さや香出版社/メーカー: 名古屋大学出版会発売日: 2011/03/07メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 87回この商品を含むブログ (26件) を見る 優等生的な読書感想文…

有用性と確実性の運命

科学アカデミーと「有用な科学」 -フォントネルの夢からコンドルセのユートピアへ-作者: 隠岐さや香出版社/メーカー: 名古屋大学出版会発売日: 2011/03/07メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 87回この商品を含むブログ (26件) を見る 結局買ってしまった。…

グローバル化:物流・価格・資本の区別

ナショナリズムをどう考えるかとも関連するが、「グローバル化」とか世界市場・世界システムとかいっても、 (a) 商品の移動:国境を越えて商品を売り買いする場ができること (b) 価格(交換比率)の変動:需要と供給が反比例する自由市場という有名なあれ (c…

そのエッセイとFAZはたぶん無関係

http://blog.tatsuru.com/2015/04/10_1343.phpなんだか要領を得ない話だと思うわけだが。だいいち、これ、内田樹が翻訳できる、ということから考えても、Japan basher や whitewash the history という単語が挿入されていることから考えても、FAZの記事じゃ…

事務職員の戦闘服

あなたの学校の職員さんは、どんな服装でお仕事をしていらっしゃいますか? - 先日、学生食堂で「お久しぶりです」と声を掛けられた。見顔見知りの卒業生が、ビシっとスーツを着込んで「今はここで働いています」と言う。そういえばここの学校の男性職員さん…

ピーター・スタイン『ローマ法とヨーロッパ』

ローマ法とヨーロッパ (MINERVA21世紀ライブラリー)作者: ピータースタイン,Peter G. Stein,屋敷二郎,藤本幸二,関良徳出版社/メーカー: ミネルヴァ書房発売日: 2003/03メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログ (5件) を見る パンデクテ…

森正の「饗宴」

黛敏郎 IIアーティスト: 東京交響楽団,黛敏郎,岩城宏之,森正,海野義雄,堀伝,奥邦雄,小野崎純,本荘玲子出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン発売日: 1997/04/23メディア: CDこの商品を含むブログを見る 黛敏郎の「饗宴」は色々な人が取り上げて、サバ…

「制度 institution」再考

ドイツ法のパンデクテンについては、ここで何か言及されていたはず、と読み直してみた。 ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇作者: 東浩紀,濱野智史出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2010/05/25メディア: 単行本購入: 7人 クリック: 204回この商品を含む…

制度いじりは革命ではない

上のエントリーを踏まえて考えるとしたら、既存のしくみとして人間社会でうごめいている諸々の制度 institution をいじくり回すだけでは、それらをダイジェスト方式(パンデクテン方式)で総覧したときに見えてくる社会全体に「革命」が起きるわけじゃないの…