2018-02-01から1ヶ月間の記事一覧

相手に届かない言葉

前にも書いたが、朝日新聞の朝比奈隆追悼文について伊東信宏さんに感想を述べたら、「こういうことは、生きているうちに書かくのでなければいけないのだけれど」という趣旨のことを言われた(伊東さんはこういう口調で話す人ではないから、私の記憶のなかで…

子育て・滞納・批評 - 「願い」について

子育ては費用対効果の悪い贅沢なのか、そうではない、驚異的に費用対効果の良い投資かつ遊びなのだ、という話題が拡散しているのを見て、そこに、自らの意志でコントロールできない存在の行く末に対する「願い」の視点が欠けていることにぎょっとした。私に…

事実と伝聞

官公庁(警察・消防など)の発表をもとに事件の概要を記述したり、主催者のプレスリリースをもとにイベントを紹介するのも、「伝聞のみによる報道」に分類されるだろう。人間が把握するこの世界は、「伝聞」を取り去ったところに「事実」という直接体験が姿…

お客様に親切な音楽家たち

片山杜秀の建国記念日エッセイを読んでから、山田和樹・樫本大進が日本センチュリーと共演した演奏会に行ったのだが、客席・ロビーをみわたすと、片山の嘆きとは違って、白髪のお客様ばかりではなかった。そういえば、先日のやたらとオーボエ吹きが聴きに来…

適正規模

片山杜秀の建国記念日の寄稿は、「適正規模」というワードに軟着陸する。クラシック界の未来 片山杜秀 :日本経済新聞そういえば、先週末は「攻めの広報」で一世を風靡した音楽ホールの現代音楽演奏会に行って、安定した運営ぶりに感心したのだが、あれは、…

車輪の再発明 - 感嘆詞の哲学

自分が関心ないことは無価値と判断しがちだし自分が関心あることは価値があると判断しがちである。なので全く自分が関心ない物事に「うお!これ凄え!」と価値を認める人は結構大人物かもしれない(単にいい加減で調子が良いだけかもしれない。だが想外の大…

多様性ベースの世界観

輪島祐介が演歌の言説史研究(創られた日本の心云々という長いタイトルの新書)の最後で多様性の擁護のようなことを書いたのを読んだときに、いきなりこの結論に飛ぶのは甘いのではないか、と思った。音楽を同一性ベースで読み解く構えは、楽曲分析から社会…

無限の多様性と幸福の総量

価値が4と6のものを、0と10と認識するのは非常に大雑把だけど、5と5だと認識するのも真実ではないよね。 回路が通電するかしないか(on = 1 / off = 0)の区別を基礎にして計算を進める機械を使用するのであれば、4 と 6 の関係を補足するときには、 4 と 6 …

なぜ事実を茶化してはいけないのか?

「事実」はデータから構成された仮説として得られる、というのは、ほぼ現在では多くの人の一致する見方だと思うけれど、これは、事実が「構成された仮説」=人工物・作り物であり、自然ではないからいいかげんに扱って良い、ということにはならない。「事実…

大学教員資格更新テスト(論述) 2

以下の文章における間投詞「わー」の効果を、学術雑誌のインパクト・ファクターと研究者コミュニティにおけるその誤用と関連づけて分析してください。 演歌は「日本の心」か 実は1970年前後に誕生 kyoto-np.co.jp/top/article/20… わー先日の音楽学会の…

【表象文化論】蜘蛛の糸はどれだけの重さに耐えられるのか?

私は前から言っていますが、研究者を志望する人は「上だけを見る」ようにしてください。世代や国を問わず「自分よりも優秀な人」だけを常に意識して、切磋琢磨してください。他方で「底は抜けている」ので「自分よりも下」がどれだけ多くても、研究者になる…