お客様に親切な音楽家たち

片山杜秀の建国記念日エッセイを読んでから、山田和樹・樫本大進が日本センチュリーと共演した演奏会に行ったのだが、客席・ロビーをみわたすと、片山の嘆きとは違って、白髪のお客様ばかりではなかった。そういえば、先日のやたらとオーボエ吹きが聴きに来ていたいずみシンフォニエッタの演奏会も、客層は現在の日本の人口比率からかけはなれて高齢者が多いというわけではなく、それなりに老若男女が混じっていた。

(そもそも日本全体で高齢者の割合が高いのだから、一定数の高齢者がコンサートに来るのは普通のことで、クラシック音楽が高齢化しているかどうか、その傾向が加速しているかどうか、というのは、絶対数や客席における割合ではなく、日本全体の高齢者比率を基準に考えたほうがいいと思う。)

飯森範親と山田和樹は、音楽家としての資質や現在の活動のあり方など、ほとんど似ていないけれど、強いて言えば、2人ともお客様に対して親切な指揮者かもしれない。

飯森範親は長らく試行錯誤七転八倒して、ようやくお客様(や楽員)との間合いが安定してきた感じで、山田和樹は、そろそろ親切なだけではない何かが出てきていいんじゃないか、という感じだけれど、「絆・つながり」とか「女子力」とか「アウトリーチ」とか、というのが、現状では親切な人の周りに輪ができる状態に着地しつつあるかもしれない。

最終最適解というより、とりあえず今はそのあたりが落としどころになっている(この先いつまでこうなのかはわからない)ということだと思いますが、

無愛想な強面、にとっては冬の時代みたいですね。

しかしそうなると、むしろそういうときだからこそ、無愛想な強面路線を目指してみたくなりますが(笑)。

親切 kindness は、つっけんどんな無愛想と対比されがちだけれど、同時に、ファスト風土/下流志向的な無際限の奉仕・サービスではないところもポイントだと思う。親分子分/先輩後輩、黙ってオレについてこいの風土に kindness は育たない。大阪においてすら、都市文化の潮目が変わってきた。