2017-05-01から1ヶ月間の記事一覧

落ち穂拾い

時間がないので、いくつかの思いつきを短くメモ。(1) ロジェストヴェンスキーのブルックナーブルックナーの5番を色々な演奏でまとめて聴く、ということをやるとしたら、シャルク版が面白かろうと思うのだが、どうして正面切って面白がる人がいないのだろう。…

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ここに来れば いつでも本当の自分になれる本当の仲間に会える世界最高品質のエコー・チェンバー...twitter powered by Google[追記]「真由子ブログ」が原点 “ブラック部活”と“やりがい搾取” | 文春オンライン高等教育も、「遊民的」に運営すると「やりがい搾…

留学のインセンティヴが乏しかった世代の不幸

1990年代に入って、大学院改革のまっただ中にいた大学生・大学院生たちは、その前の世代に比べて留学する者が少なかったように思う。専任教員になってからようやく在外研究の機会を得た人が、「幸運にも私が海外で知り得た事実を日本国内の一般大衆は知らな…

聴衆を急かす昨今のレセプショニストたちの反時代性

最近の音楽専用ホールでは、開演5分前にベルが鳴ると、レセプショニストたちが会場のあちこちで、開演したらすぐには会場に入れなくなるから急げ、と(まだ5分もあるのに)お客さんを急かす。路線バスでは車両が完全に止まってドアが開いてから席を立ちまし…

無音室と反響室

世界的な高度経済成長が一段落した20世紀の最後の30年、ジョン・ケージからサウンドスケープへ、という音のエコロジーの議論でケージの無音室体験が神話的に語られてきたわけだが、反響残響という現象に関する知見は、今では音楽専用ホールという窮屈な人工…

ヒューマニティーズとリベラル・アーツ

ある会社のAIが囲碁の対戦から撤退(「引退」と擬人化して言うべきか?)したあとも、人間は囲碁を打ち続けて、アルファ先生/マスター先生の着手は「新定石」に登録されて研究され続けるし、別の会社が囲碁AIを開発し続けたりすることだろう。懲りない人間…

婦人ピアニストの系譜

ポストモダニズムを物理学者がからかった90年代の事件と同じ次元で、2017年のフェミニズムへの悪戯に快哉を叫んでいいはずだ、という判断に私はどうにも同意できないのだが、いまのところ、これは直感的なことで、うまく説明できない。*鍵盤音楽史の授業で…

テクノロジーへの忠誠、あるいは、偶有的社会集団への無関心

手の付けられない幼児が大暴れするかのようにそれなりの存在意義のある社会集団を皮肉な物言いで引っかき回さなくても、「私はドイツ音楽史やビデオ・ゲーム業界からサンプル・データを収奪して表象文化論を鍛えることに生涯を捧げており、別にドイツ音楽や…

21世紀のニッポンのクラシック批評と作品解釈は社会構成主義への反動を目指すのか?

広瀬大介先生がご自身を「評論家」だと認識しているはずはない、批評を所望された場合には、音楽学者としての感想を述べるに留める、という括弧付きで仕事をしていらっしゃるのだろう、と思っていたので、ご自身の発言として、「批評の書き方」を開陳してお…

編集者という人生

学問への愛憎相半ばの心情を抱えながら大手出版社から独立しつつ吉田秀和の喪失を嘆く、というのは、要するにファザコンなんだろうなあと思う。別にいいけど。

「歩留まり」と「とかげのしっぽ」:研究の経済のために

ものづくりに関わる仕事をしている人たちは、投入した資金・人材・原材料を100%一切の無駄なく製品に変換する夢の工場など存在しないことを知っているから「歩留まり(率)」を組み込んで会社を経営しているはずだ。学問・研究も、先生たちの教室での授業を…

マゼッパとワルキューレが指し示すもうひとつの「音楽の国」

いまさらですが、リストの交響詩マゼッパとワーグナーのワルキューレの騎行は似てますよね。マゼッパはユゴーが歌いあげたコサックの英雄だから、今で言えば、もはや「ソ連」ではないウクライナの伝説の男。一方ワルキューレをワーグナーはドイツ・ゲルマン…

そこから利益を得る行為のいったい何がいけないのだろう?

「政治家と官僚がどちらが学問を食い物にするかで争っている」という表現を見かけたのだが、それを言うなら、大学教員もまた、学問で食っているのではないか。自分がそこから利益を得ていることが(山崎正和の采配で)公然化することとなった「サントリー学…

在日日本人の思想:人類学とジャパノロジーと知の経営

阪大の音楽学の講義をやる視聴覚教室は文法経講義棟の一番端にあって、渡り廊下の先は日本学の研究棟だった。小松和彦の授業を受けたが(『消えたヒッチハイカー』についてレポートを書くのが課題だった)、日本学にはなんとなくなじめず、「こっちは文化人…

ディレッタントの強み

たとえば川崎弘二の仕事は、「日本の電子音楽(の研究)って面白い、自分もやってみたい」と思わせる質と量を誇っているが、彼は本業を別に持つ日曜研究者だ。(彼を見いだした大谷能生もそうですね。他には、イタリアオペラ研究の水谷彰良のような人もいる…

山の頂を守る

微妙な距離にランダムに出現するのをいちいち相手にしていたらキリがないが、郡山の砦の跡に出たとあっては心穏やかではいられない。周囲を歩くと、西国街道の南側に位置する山頂から能勢のほうまでみわたすことができて、なるほどこういう場所に砦を構える…

楽劇と弦楽四重奏とオルガン

ところで、楽劇研究で名を成して最近は楽劇系シンフォニーにご執心の広瀬大介先生は、カルテットはどうなのだろう? 国際コンクールに一次予選からつきあって面白がることができる耳があるのだろうか? カルテットが開拓した四声体は、ブルックナーのような…

「音楽の国」で弦楽四重奏というゲームの会社をスタートアップする、ということ

http://yakupen.blog.so-net.ne.jp予選や本選の休憩中にいずみホールの喫煙ブースに行くと、京都で「エク」のお世話をしていらっしゃる奥様(面識はなく、口ぶりからそれとわかった)と一緒になってしまったりして、このコンクールは、「未來ある子供」を「…

ヨーロッパの民族音楽としてのピアノ音楽

鍵盤音楽史の授業でシューベルトの話をする回になって、恩師谷村晃が阪大の授業(「行進曲と子守歌」という題目の特殊講義だったかと思う)で使っていたバドゥラ=スコダとデームスの軍隊行進曲のレコード音源をネットで探したり、最近ではラ・フォル・ジュ…

ブルックナーのユニゾン:ひとつに重なることはそれほど感動的なのだろうか?

それぞれの団体やマネジメントが別個に計画したコンサートのスケジュールをグローバルな情報社会にふさわしくカレンダー上にマージすると、この週末のこの島はブルックナーの交響曲第5番を3〜4種類の演奏で聴くことができる特別な期間であったらしい。私は、…

ヴィオラの彼

今年は結局、弦楽四重奏の部しか行けなかったが、一次予選のヤナーチェクから、ヴィオラの彼が室内楽が好きすぎて女性3人を誘ったんだろうなあ、としか思えなかったアメリカのグループがどこまで行くのか、そこに注目しておりました。(選曲も、概してヴィオ…

コンテンツホルダーの威力

JASRACが京大に突撃した件は、式辞で総長が歌ったわけでもなく、ボブ・ディランのCDを流したわけでもないのに「音楽」著作権の管理団体が登場した点が異様に見える。ボブ・ディランの楽曲の権利を保有しているのがどういう団体で、その団体がどういう方針で…

エリート教育と依怙贔屓

一つ前のエントリーは、ざっくり言うと、エリート教育が誰かを依怙贔屓で特別扱いすることであってはならない、ということで、「個人利益」という言葉を文科省の役人が持ち出したのは、彼らなりの言葉遣いでそのことを指摘したわけだから、この文言に脊髄反…

Speciality という病:19世紀的な知の「特殊/一般」という対概念に固執する旧来の大学人の発想を日本的経営の「総合職/一般職」の区別に接ぎ木する日本的就職の不幸について

近代の学問には、それぞれの領域に固有なspecialityを見いだし、分野学科を分ける発想があるが、経済は、入門段階で比較優位という考え方が出てくるように、特殊と一般の区別にそこまで固執しない。つまり、価値の交換における分業は、特殊と一般の仕分けと…

カール・マリア・フォン・ウェーバーとチャイコフスキー

大阪フィルの定期でフェドセーエフがウェーバーの「オベロン」序曲、交響曲第1番とチャイコフスキーの交響曲第5番を演奏した。(私は都合で、初日に前半のウェーバーだけ聴いた。)ウェーバーの交響曲は、現在進行中の全集で既に新しい譜面が出ているはずだ…

自由意志

高いから買わない、はデフレスパイラルの典型的なマインドセット。高いけど、ここをこうしてあそこをああすればなんとかなる、を積み重ねるのが市場経済における自由意志ではないだろうか。俗世には拒否権以外の自由はない、というのでは、宗教家の形を変え…

予算申請書の「見込まれる成果」は実体のない美辞麗句ではない

科研費も公的予算の執行なので「見込まれる成果」を書く欄があるが、そこに書き連ねられた素晴らしい成果は、実現しているのだろうか? 「問題提起」を重視して、その成果の実現可能性の見積もりが甘くなっていることはないだろうか?現状では、多くの人文家…

揚げ足取りは個人利益以外の何の役に立つのか

大学関係者がネットでそこに脊髄反射で食いついたら、やっぱり個人利益じゃん、って思われて不毛だと思う。もはや読書ベースの教育は道徳的人格形成に役立たなくなっているではないか、ということになりそうだし。

人類愛を説得する

今年も授業でハイドン「天地創造」の話をせねばならない。去年はかなり丁寧に曲の成り立ちや台本・楽曲構成を説明したのだが、学生さんの食いつきがいまいちだったので、今年はできるだけ広く大きな文脈にこの曲を置いてみようと思う。ヘンデル「メサイア」…

制御された乱数

ポケモンGOは、リアルな地図(理念的には地表全体に広がり得るはずの)をサイコロに見立てるスロットマシンなわけですが、このスロットマシンが面白く遊べるのは、あらゆる可能性が等しく起こりうるようなエントロピー極大の状態にユーザーを突き放すのでは…