聴衆を急かす昨今のレセプショニストたちの反時代性

最近の音楽専用ホールでは、開演5分前にベルが鳴ると、レセプショニストたちが会場のあちこちで、開演したらすぐには会場に入れなくなるから急げ、と(まだ5分もあるのに)お客さんを急かす。

路線バスでは車両が完全に止まってドアが開いてから席を立ちましょう、とか、エスカレーターは片側を空けたりせずに詰めて乗るのが安全かつ一番効率的なので、焦って駆け上がらないようにしましょう、とか、老若男女が集まるパブリックスペースでは「慌てないこと・急がないこと」が幸福を最大化するはずだ、と、いかにも情報化社会らしい知見にもとづくスローガンが掲げられつつあるご時世に、音楽専用ホールだけが、かつてないほど「時間厳守」にこだわって聴衆を神経質に急がせるのは、何かが滅びの道へ向かって死に急いでいるような気がしてならない。

コンサートなんて、3分押し、5分押しで開演したって、別に大した問題じゃないと思うのだが。

音楽は、ライヴ・ナマモノだといっても、「できたてホヤホヤ」をすぐに食べないと味が変わってしまうお料理とは違うのだから、力点を間違っていると思えてならない。

地上から空へ飛びたつ飛行機という鋼鉄の密室のなかで乗客の命をあずかっているわけじゃないのに、どうして最近のレセプショニストは、あんなに「危機管理の非常態勢」モードをふりかざして、我こそはこの空間の管理責任者であるぞ、と軍人めいた態度をとるのでしょうか?

(まさか、とは思うが、開演が遅れたときにはホールが主催者に違約金を払う契約になっている、とか、逆に、音楽家はオンタイムにステージ上に登場しないと逆にホールに違約金を払う契約になっている、とか、そんなアホなことはないですよね。一昔前のJR西日本の非人間的な「オン・タイム」至上主義じゃあるまいし。)