2010-01-01から1年間の記事一覧

今年を締めくくるDVDと書籍をひとつずつ(吉田喜重「秋津温泉」、片山杜秀『ゴジラと日の丸』)

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[訂正:片山さんの本のタイトル間違えていました。直しました。PM 6:20 最後に片山さんの讀賣新聞書評の今年の3冊にかこつけた結びを書き足しました。]その1:大栗裕を起点にして、音楽と映像・所作・芝居というテーマに、なんとか手掛かりを見つけたい、…

学術論文というプログラム、文献参照は不良債権か?

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(昨今の学問業界には、「それは本質主義だ」と指摘するオールマイティ・カードがあって、このレッテルを貼られた相手はそれ以上反論してはいけないというような、まるで中世の魔女狩りのような慣習があるらしいので(さすがピューリタンの国アメリカ、なん…

無題

重要なのは「芸術」以外の音楽の機能について考えることである、という主張には大いに同意(というかその同意もまた渡辺先生による「音楽学者づくり」の成果によるものなのだが(笑) わーやばい今年も仕事納め - ロック中年リハビリ日記・別館 (引用文で開…

ルシュール先生、アルマ・マーラーにご機嫌斜め

いつも利用させてもらっているドビュッシー評伝の一節について、あるブログで見かけて、おや、と思ったので調べてみました。 アルマ・マーラーは[…中略…]ドビュッシーの私生活を巡ってパリに広まっていた陰口に基づいた信じ難い話をでっちあげ、リリーが自分…

複製の創出 救世主イエスの祝祭日を前にして細川周平『レコードの美学』とアドルノとベンヤミンを読む(もちろんBGMは日テレ放映の「This Is It!」)

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[12/26 ミュラー=ドーム『アドルノ伝』を読んだ感想を最後に追記しています。12/31 タイトルから「芸術」の語を削除。複数箇所を「複製芸術→複製技術」と変更。ただし、ギリシャ語系のtechnologyが「技術」、ラテン語系のartが「芸術」、と機械的に訳し分け…

クララ&ロベルト・シューマン夫妻

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昨年末にはショパンのピアノ曲を寸劇つきで紹介する演奏会を企画させていただきましたが、今年は、クララ&ロベルト夫妻を特集した演奏会の解説を書かせていただきました。

レコード歌謡・笠置シヅ子・ダンスホール(「演歌は日本の心」を留保するなら、「みなさまのNHK」イメージや、竹中労悪人説にも留保が必要かもしれません)

道頓堀ジャズや関西のダンスホールとレビューや服部良一の活躍を伝えてくれる本、奇しくも表紙のデザインが似てしまっている二冊が相次いで出たので、早速購入。 ニッポン・スウィングタイム作者: 毛利眞人出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/11/26メディ…

武智鉄二演出の「蝶の道行」

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昨年の歌舞伎座さよなら公演のDVDで、「蝶の道行」を観ました。川口秀子振付、とのみ出ていますが、武智鉄二の1962年の演出を踏襲していて、彼の演出(の片鱗)が現役で残っている演目は、これだけらしいですね。(歌舞伎で、外部の「演出家」が入ったこと自…

音楽書の日本語訳は製本が立派になる、の法則?

前にも書きましたが、Alice M. Hansen, Musical Life in Biedermeier Viennaという本は、メッテルニヒ時代の音楽の検閲を扱っていて、ドイツ語訳は「検閲されたミューズ」の題を添えて出版されて(写真左)、一方、邦訳は「音楽都市ウィーン 黄金時代の光と…

『思想』12月号、シューマン生誕200年特集:補遺

せっかく買ったので、無駄にしないように読書ノートをつけてみた。

ジャンル「内」の闘争なのか、ジャンル「間」の闘争なのか?(『思想』12月号、シューマン生誕200年特集)

「歴史の空白とジャンルの闘争」は「論文」だそうなので、裏読みはやめて、気づいたことの箇条書き。ダールハウスのジャンル論を思想史の文脈に位置づける前段は、ルカーチを知らなかったので勉強になりました。(ワーグナー本でもダールハウスの扱いの手際…

個人技部門

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まだ現物を見ていないので具体名は伏せますが、ベストを尽くしているに違いないことを認めたうえでなおかつ「相変わらず」感を拭えない企画の話を聞いて、ふと思ったこと。個人の能力を最大化して記録=レコードを叩き出す、というスタイルは、もうこれから…

Don't you know the words "comprehension" and "extension", Gakujutsu-Hakase-san?

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内包と外延(小鍛冶邦隆『作曲の思想』p.20-22)について:

2012年から桂冠指揮者(大植英次退任までのカウント・ダウン、本当に?)

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http://www.osaka-phil.com/news/detail.php?d=20101201ひとまず大フィルの公式リリースと大植さんのコメント。大植さん、来年あと1年だそうです。感想はのちほど。(2012年は大栗裕の没後30年の節目なのに……って、それは別の話ですが。)

小鍛冶邦隆『作曲の思想』をヴァルター・デュル『Sprache und Musik』の邦訳とあわせて読む

[12/1 最後に小鍛冶邦隆さんの文体についてあれこれ書き足しています。色々なことを考えさせられる本で、こちらも必死で読んでおり、文章がいつも以上にとっちらかっていて申し訳ないのですが……。]読書の秋です。 作曲の思想 音楽・知のメモリア作者: 小鍛冶…

大げさな書名をファッション・チェック?

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最近は出版不況で、会社の企画会議を通すのが大変、などと聞きますが、やっぱり、書物のタイトルがいわゆるマーケティングの観点から出版社の様々な意向を加味して決定されるケースが普通なのでしょうか?新聞の場合は、外部著者の署名記事であっても見出し…

田之倉稔『モーツァルトの台本作者 ロレンツォ・ダ・ポンテの生涯』

モーツァルトの台本作者 ロレンツォ・ダ・ポンテの生涯 (平凡社新書)作者: 田之倉稔出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2010/08/12メディア: 新書 クリック: 4回この商品を含むブログ (3件) を見る これから読むところですが、モーツァルトの台本作家が晩年はア…

千年後から振り返るヨーロッパ音楽の歴史(を岡田暁生『「クラシック音楽」はいつ終わったのか?』が出たのを機に素描してみる)

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今からおよそ三千年前からヨーロッパではキリスト教がさかんになり、キリスト教会は、教祖イエスの生年と伝承される時点を起点とするグレゴリウス歴を用いました。そして当時のヨーロッパでは、音楽においても、キリスト教の理論と礼拝が基礎になっていまし…

岩井直溥の語り下ろし自伝(ついでにちょっとだけ、レコード歌謡つながりで、輪島裕介『創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史』)

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別のことを調べていて、偶然見つけた岩井直溥さんの語り下ろし自伝。(そういえば昔、岩井直溥指揮・編曲の吹奏楽ポップスをナマで聴いたのは、今はなき大阪府音楽団のコンサートでした。)http://www.bandpower.net/soundpark/02_iwai_story/iwai_index.htm…

大澤壽人・一柳慧・小石忠男の神戸つながり、一柳慧は「二代目大澤壽人」だったのか?(関西フィルハーモニー管弦楽団第225回定期演奏会)

[11/23 岡田暁生の新刊の感想を真ん中あたりに簡単に追記しました。←12/1 この部分をさらに書き足しています。]木村吉宏さんが出演して大栗裕を語るNHK-FMの番組、録音できていたのでようやく聴くことができたり、大阪センチュリーを語る鼎談に参加させてい…

武智鉄二・坂東三津五郎『芸十夜』復刊

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NHK-FM吹奏楽のひびき、時間を勘違いして聞き逃してしまいました。大失態。金曜午後の再放送を予約録音することにします。表章先生の遺作は、資料研究をやろうとする者は必読。西洋音楽史とかカルスタのいいかげんな輸入業者感覚で日本を語れば、お手軽ラク…

大栗裕、吹奏楽方面(「管楽器と打楽器のためのディベルティメント第1番(小組曲)」とスウェーデン放送響のこと、NHK-FM「吹奏楽のひびき」11/14の大栗裕特集のこと)

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なぜだかよくわからないのですが、このところ大栗裕と縁のあるものが相次いで色々出てくるようで。その1:朝比奈隆ヨーロッパ・ライヴ第3弾としてリリースされた1956年のスウェーデン放送交響楽団ライブ。朝比奈隆は、彼らと2つの演奏会をやっていて、こ…

小石忠男さんのこと

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「神戸の大澤壽人という作曲家のことを、あなた、やってみる気はありますか?」小石さんが電話でそういう風に切り出されたのは、2004年の春頃、NAXOSから大澤壽人作品集が出る直前のタイミングだったと記憶しています。自宅へ直接お電話をいただいたのは、た…

箏のこと、大栗裕の「二字目起こし」のこと(「エキスポ・クラシック」 − 音楽家から見た大阪万博 ー:補遺)

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昨日ご紹介させていただいた大栗裕の歌劇「地獄変」(1968/1970)は、最初に箏の弾き語りがあります。平安朝の物語に近世邦楽は時代が合わないわけですが、それはともかく、大栗裕生前の2回の公演については、中島警子先生率いる桐絃社社中の皆さんが十二単…

講演終了、1970年大阪万博は巨大だった

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ご来場の皆様、ご静聴ありがとうございました。[追記:こちらの補遺もあわせてどうぞ。http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20101109/p1 ]70年大阪万博という巨大イベントについては様々な切り口があると思うのですが、今回は、前半で実演3曲(貴志康一「竹取物…

岡本太郎詣で

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70年万博は、突貫工事で千里の竹林を更地にして未来都市を造って、会期が終わるとまた全部壊して40年かけて人工の森を作って……。今では太陽の塔は、山に忽然とゴジラが出現したみたいに見えなくもない……。月曜に万博の話をすることですし、天気も良かったの…

吹奏楽関係者にもお勧めしたいです、11/8(月)「エキスポ・クラシック」 − 音楽家から見た大阪万博 ー

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先日来「よみがえるラジオ歌謡とその時代」で検索して来られる方が相次いでいるようで、ありがとうございます。そうしたご用命はこちらへどうぞ。 http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20100806/p1 http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20101102/p1 http://d.hatena.…

放送終了:よみがえる「ラジオ歌謡」とその時代〜大阪発・60年ぶりの復活演奏〜

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上田早苗アナウンサーに公共の電波で自分の名前を読み上げていただいて感激した……と茶化して終わりにしようかと思っていたのですが(笑)、(上田アナって、大河ドラマ「新選組!」の頃、昼の番組の司会をして、三谷幸喜や山本耕二と楽しくトークをしていた…

明日放送です:よみがえる「ラジオ歌謡」とその時代〜大阪発・60年ぶりの復活演奏〜

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バタバタしている間に、放送日は明日に迫って参りました。http://www.nhk.or.jp/osaka/bk85/program/番組ページには出ていませんが、大栗裕の歌劇「夫婦善哉」の抜粋も収録されているので、放送されるはずです。放送内で紹介されるかどうかはわかりませんが…

ブルックナーの書棚、近代言説空間の「穴」、19世紀の音楽家のリテラシー(読み書き能力)

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某氏へ、というわけでもないのですが……、私もながらくブルックナーをバカにしていたのですが、そんなときに吃驚したのが、偶然、民放在阪テレビで観た金聖響のインタビューでした。インタビューで話す金聖響は、マスコミが「球界のケンカ番長」のレッテルを…