最近は出版不況で、会社の企画会議を通すのが大変、などと聞きますが、やっぱり、書物のタイトルがいわゆるマーケティングの観点から出版社の様々な意向を加味して決定されるケースが普通なのでしょうか?
新聞の場合は、外部著者の署名記事であっても見出しはデスクが決めますが(批評の見出しもそう)、単行本のタイトルもそれに近い状態になりつつあるのでしょうか?
『「クラシック音楽」はいつ終わったのか?―音楽史における第一次世界大戦の前後』(レクチャー第一次世界大戦を考える)
という書名は、「クラシック音楽は終わっている」という物々しい惹句なしに、
『音楽史における第一次世界大戦の前後(レクチャー第一次世界大戦を考える)』
だったら、部分的な誇張が気になるにしても、教養部のざっくりまとめた講義録として普通に受け止めることができそう。
『創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史』
は、どうやら実際は裏付け調査が結構綿密になされているようなので、これはもう、どかんと一発
演歌論
逃げも隠れもしません、と開き直るのが、骨太な感じの論述に合っている気がしなくもないような……。
あくまで、出来上がった本を読んだ印象に過ぎず、実際の書物とそのタイトルがどう決まったのか、ということは、もちろん私にはわかりませんが、内容とタイトルの釣り合いが悪い書物を買ってしまうと、いつまでも解消できない居心地の悪さがありますよね。で、この違和感をどこへ投げ返せばいいのかがよくわからない。著者へ?出版社へ?世相へ?
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著者と読者の間にはさまっている出版社(の営業)さんのなかにだって、キャッチーなタイトルで瞬間風速を高めて売れればいい、と思っている人ばかりではない(はず)と信じたいところなのですが、実際はどうなのでしょうね。
こんな風に、ギョッとするタイトルが横行してしまっている今の状況では、序文なり、あとがきなりで、書名の経緯に「種明かし」が欲しいかも。
いやそうではなくて、岡田暁生はあのタイトルを自分で考えたのか、輪島さんの場合はどうなのか、と想像するところから「読書ゲーム」はスタートしているのであって、早々のネタバレは野暮、ということでしょうか。(タイトル確定の経緯が、バレてはいけないネタになる状況というのも、妙な話ではありますが……。尖閣ビデオじゃあるまいに。)
そのうちファッション・チェック!風に、新刊書のタイトルを、「似合う/似合わない」の観点でコメントする、書評界のピーコが現れてもおかしくない状況ではあるのかもしれませんね。
(ファッションにはTPOも大事な要素。『ピアニストになりたい』はどちらかといえばサントリー学芸賞とか、ファッショナブルな民間向け、文化庁が芸術祭などより上位に位置づけているらしい芸術選奨には、『オペラの運命』や『西洋音楽史』とかのほうが似合いそうなのに、なぜかアベコベの賞を受けている。なんだか、ちょっとねえ……。
あ、でも『日本語が亡びるとき』も授賞してるから、今の芸術選奨はセレブっぽい雰囲気を醸し出していればいいのか、書物ではなく人(脈)に与えられる賞だな、きっと。そしてそういう人(脈)査定の先に、新国立劇場音楽監督への布石(ですよね)としての「文化功労者・大野和士」があるんだな、とか。)
……というようなことを考えたのは、実は、こんな書名を見つけてしまったからなのですが。
- 作者: 椎名亮輔
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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内容に沿った書名であるらしい雰囲気ではありますが、ギョッとするタイトルの競争というものがあるのだとしたら、上位入賞間違いなし?!
人目を惹くタイトルというものは、これくらい腹を据えて付けねばならない、中途半端な惹句の横行にもの申す、という美学者の心意気(?)なのでしょうか。
- 作者: 佐々木健一
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2001/11
- メディア: 新書
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