2014-08-01から1ヶ月間の記事一覧

演劇ジャポニズムの再起動:日本の音楽会の上空にヘリコプターが飛来する日は訪れるか?

この文章の要旨:新古典主義がカジュアルに「オマージュ」や「パクリ」を繰り返すポップな複製文化の道を開き、表現主義が映画やテレビドラマの特殊効果音としてコモデティティ化して生き延びたように、戦後のミュージック・シアターの様々な試みは、冷戦後…

音楽は言葉を裏切る、オペラは台本を裏切る、だから面白い

音楽は決して言葉(詩や台本)の忠実なしもべではなく、言葉を裏切ったり、出し抜いたり、おだてておいてはしごを外したり、素知らぬ顔で別のことをやったり、言葉と面妖なつきあい方をすることで、最大のパフォーマンスを引き出そうとする。たぶん、舞踊や…

マネ「笛を吹く少年」は案外大きい、バレエ・リュス衣装展は図録がいい

シュトックハウゼン「歴年」は間が1日空いているので、六本木の美術館という似つかわしくない場所で遊んでいる。追記1: オーストラリアから来たバレエ・リュスの衣装展、図録には、バレエ・リュスがどのように日本へ伝わったか、ややこしい話をまとめた論文…

ささやき戦術

音楽の生まれるとき-作曲と演奏の現場作者: 井阪紘,西村朗出版社/メーカー: 春秋社発売日: 2010/08/20メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログ (4件) を見る

「ナクソス島のアリアドネ」初稿のこと、マクヴィカー演出「サロメ」の日本語字幕のこと

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イタリア詩人の市場価値

モーツァルトの台本作者 ロレンツォ・ダ・ポンテの生涯 (平凡社新書)作者: 田之倉稔出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2010/08/12メディア: 新書 クリック: 4回この商品を含むブログ (3件) を見る

山羊の歌と行列の歌

ついさっきまで、悲劇と訳される tragedy -> tragoidia は山羊(tragos)+歌(ode)、喜劇と訳される comedy -> comoidia は行列(comos)+歌(ode)なのだということすらわかっていなかったので、無知にもほどがあって、何も偉そうなことは言えませんが、…

ゲーテとシラーの戯曲

ファウスト〈第2部〉 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)作者: ヨハーン・ヴォルフガングゲーテ,Johann Wolfgang Goethe,池内紀出版社/メーカー: 集英社発売日: 2004/05メディア: 文庫購入: 11人 クリック: 34回この商品を含むブログ (37件) を見る

舞台の言葉を書く力

さて、今回の公演、何が興味深かったといって、 「言葉でこんなにも響きが違うものか」 ということを、実感したことにつきます。 言葉がオペラを変える〜三枝成彰「JR.バタフライ」イタリア語版@プッチーニフェスティバル | 加藤浩子の La bella vita(美し…

何を楽観し、何を悲観するか?

ご本人の何倍ものご見解を開陳する学者先生も、たまにいらっしゃるが。ま、あまり人のことを言っても藪蛇になりそう。 http://yohirai.asablo.jp/blog/2014/08/23/7420100 学者でも、最近の若い人たちは「5分」と言われたら無理矢理にでも話を5分でまとめ…

ゲルトルート・アイゾルトが見たい!

豆知識:タレスの琥珀とエレクトラ

岡田暁生がシュトラウスの評伝で、この作曲家が交響詩や楽劇「サロメ」「エレクトラ」をバリバリ書いていたころには、その斬新な効果がしばしば電気ショックに喩えられていた、という話の流れで、エレクトラは、まさに名前が電気なわけで……、と書いており、…

すべては「アラベラ」からはじまった:ヨゼフ・ギーレンのこと

当市では、ワインガルトナーやエドウィン・フィッシャーとホテルが一緒で知己を得たこと、フィッシャーとシュナイダーハン及び、セロのマイナルディ(Enrico mainard)[ママ]との欧州第一と云われるトリオの演奏もきくことができたのは収穫だつたが、何より…

アガメムノン家のM&A "Du" と呼びかける親密なリヒャルト・シュトラウスの愛を最後まで認めなかったパトリス・シェロー

[あちこち少しずつ直しています。] Elektra [DVD] [Import]アーティスト: Coro Gulbenkian出版社/メーカー: Belair発売日: 2014/05/19メディア: DVDこの商品を含むブログ (1件) を見る

濡れ衣?ありがち?

http://blogs.yahoo.co.jp/katzeblanca/26016797.html https://twitter.com/MegumiMorioka/status/501714021448298496「声への関心がようやく芽生えはじめた」という発言の行き着く先が初音ミクだと判明したときの脱力感(笑)。現実逃避のロリコンじゃん。…

サウンドの貧弱な音楽が普通に流通する世界

日本のフォーク完全読本作者: 馬飼野元宏出版社/メーカー: シンコーミュージック発売日: 2014/06/30メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る

『日本の翻訳論 アンソロジーと解題』

日本の翻訳論―アンソロジーと解題作者: 柳父章,長沼美香子,水野的出版社/メーカー: 法政大学出版局発売日: 2010/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る

黄色いオペラを卑下する黄色い人、そこに逆転の勝機を見いだす人

そういえば、能を見ない謡・仕舞の稽古人、プロの演奏を聴くのを億劫がる素人オーケストラ団員、オペラ公演に通わない声楽専攻学生、他人の舞台にあまり興味ない学校演劇部員、は多い。「やること」を楽しむ、凝るのも結構だが、良きホンモノを見聞きしない…

大学のドイツ語教師

引き続き、びわ湖の夏のコンヴィチュニーの落ち穂拾いです。本当は、今一番気になっているのは、ドイツ文化センターと日本ワーグナー協会の歴史と現在。ドイツ文化センターは、ドイツから人が来たり、ドイツへ留学したりする時に必ず名前が出てくる機関だし…

小ネタ

Traviata [DVD] [Import]アーティスト: Oper Graz,Evans出版社/メーカー: Arthaus発売日: 2011/11/21メディア: DVDこの商品を含むブログを見る グラーツのカーテンコールはどうだったんだろう、とマニアックなことを確認しようとDVDを再生していたら、収録日…

墓参り

東本願寺三十年紛争作者: 田原由紀雄出版社/メーカー: 白馬社発売日: 2004/12メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 16回この商品を含むブログ (2件) を見る

8月15日と9月2日

八月十五日の神話 終戦記念日のメディア学 ちくま新書 (544)作者: 佐藤卓己出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2005/07/06メディア: 新書購入: 6人 クリック: 442回この商品を含むブログ (131件) を見る

復刊(というか第2刷なので再刊)

昭和の作曲家たち――太平洋戦争と音楽作者: 秋山邦晴,林淑姫出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2003/04/25メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (4件) を見る べらぼうに高いが、資料として必要な人はもっておかないとしょうがない本ですよ…

「ハルサイのヒップ」と20世紀の「異物感」

http://blogs.yahoo.co.jp/katzeblanca/26006211.html「ボクはバカだから、春の祭典のヒップ(Historical Informed Performance←古楽とかピリオドアプローチとか言われているものを、アングロサクソン系の学者が最近はこう呼びたがっているらしい、あの人た…

音楽と演劇、音楽の演劇、地方分権の演劇、世界都市の演劇

Orfeo La Venexiana/Claudio Cavinoアーティスト: C. Monteverdi出版社/メーカー: Glossa (Spa)発売日: 2010/07/05メディア: CDこの商品を含むブログを見る

北口大輔

書くタイミングを逃していたが、8/7、びわ湖のコンヴィチュニーのゲネプロがあった日は、日本センチュリー響のいずみホール定期(「温故知新」とかいうやつの2回目)に行った。結局、コンヴィチュニーの10日間で2回このオーケストラを聴いたわけで、それは…

歴史は繰り返す:「私たちは演出家の実験台・モルモットじゃないのよ!」

[いくつかコメントを追記]

劇場文化の広がり

コンヴィチュニーはグラーツでは今も定期的に仕事ができているみたいだけれど、その前のライプチヒでは、あまり満足にやりたいことをやらせてもらえなかったように見える。たぶん、大きな劇場で衆人環視の状態は、妥協しない人だから、難しいんじゃないだろ…

劇場・音楽堂職員のためのオペラ演技の基礎知識、のようなもの

もし本気で日本のどこかにオペラ演出家養成コースを作ろうと思ったら、人材・設備だけじゃなく理論が要ると思いますし、自分のための整理にもなるので、オペラの演技って何なのだろう、ということをまとめてみた。想定読者は劇場・音楽堂職員。その種の企画…

「共和国のオペラ」における翻訳者の運命:森岡実穂さんの活動について思うこと

現代のオペラ演出を研究者の立場から数年来追いかけていらっしゃる森岡実穂さんは、ドイツにおけるコンヴィチュニーの位置をよくわかった上で彼の日本での仕事を一貫して応援して、びわ湖ホールのアカデミーでは、稽古の成り行きをログに残してウェブに公開…