正方形の写真

カメラの歴史は、レンズの特性を説明するのに幾何的な作図付きで光学が要るし、焼き付け・現像は化学反応で、初期の写真家は化学薬品の専門家でもあったようだし、もちろん機械製造のプロジェクトX的な工学の話にもなる(ドイツのライカvsコンタックスとか、我が日本の戦後の躍進とか)。なるほど講談社ブルーバックスにおあつらえ向きの話題なのだと納得する。

図解・カメラの歴史 (ブルーバックス)

図解・カメラの歴史 (ブルーバックス)

で、どうやら「35mmフィルム」帝国はアメリカのコダックとともにドイツのライカやニッポンのニコンが重要らしいのだが、

「反帝国主義」陣営としては、このラインから外れる「正方形の写真」に着目するといいようだ。

フィルムサイズとしては、中判と言われるものを使った一連の機械があって、そのなかでも「ブローニー判」と通称される1コマ6cm×6cmで撮るカメラが一時期かなり普及したらしい。

本家コダックの「ブローニー」シリーズは、じゃばらのついた写真機のイメージで知られているようだ。

しかし一方、カメラの設計としては、ファインダー用レンズと撮影用レンズが別になった二眼レフというのがあって、こちらは縦長の長方形のカメラを上からのぞき込むイメージなんですね。構造がシンプルで作りやすく、戦後しばらく日本ではメーカーが乱立、乱造されたらしい。

「昔のカメラの正方形の写真」というと、こちらを指すようだ。

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で、大栗裕が撮った写真のなかにも正方形のプリントがいくつかあるわけです。

35mmよりサイズの大きいフィルムは、引き延ばしの倍率が低くて済むし、もともとのフィルムが大きいので、山岳写真を高解像度で撮るのに向いているとされていたようですね。

大栗裕は、数はそれほど残していないので、中判フィルムにそこまで入れ込んでいたわけではなさそうですが……。

あと、ついでに言うと、大栗裕は少年時代に映画撮影所で音楽のアルバイトをしていた形跡があり、戦後はずっとテレビの仕事をしていたのだから、カメラに関心をもちやすい環境だったんだろうと思われます。