2015-01-01から1年間の記事一覧

反証としての分析、例示としての分析

Film Analysis 映画分析入門作者: マイケル・ライアン,メリッサ・レノス,田畑暁生出版社/メーカー: フィルムアート社発売日: 2014/10/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 映画のスナップショット満載で、さすがフィルムアート社!という感…

音楽史とオペラ史

ワーグナーの音楽史における意義とオペラ史における立場は、区別して考えた方がうまくいきそうな気がする。サウンドによる作品、とそれを成り立たせる技術(四音和音とか改良楽器の積極的使用とか)は、オペラ史というより、音楽史全般に関わるトピックで、…

ドルビー博士

オープンリールテープをセットしたり、切ったところをつなぐのが楽しくなってきたところだが、今度はカセットテープを扱っている。録音技術史の実習のような日々で、久々に「ドルビーB」サウンドを体験しております。映画のサウンドトラックにおけるドルビー…

「大栗裕の採譜の実際 - 「大栗文庫」所蔵資料の2015年度再調査報告を中心に」

日本音楽学会西日本支部第28回(通算379回)例会(2015年10月3日、於精華大学) 発表原稿(PDF) http://www3.osk.3web.ne.jp/~tsiraisi/musicology/article/msj-kansai20151003.pdf レジュメ(PDF) http://www3.osk.3web.ne.jp/~tsiraisi/musicology/article/m…

遺品と肉声

[この項は事実誤認があったので削除。大栗裕のインタビューを含むカセットテープは大栗裕の遺品です。]

transcription/arrangement

理論的なチャレンジをするわけじゃないので後回しにしていたが、New Grove 第2版の transcription の項目は短いけれども民族音楽学における数々の採譜の提案がコンパクトに概観してあって、学生時代にこのあたりを色々読んだのが思い出されて懐かしい。やは…

没後50年

山田耕筰は1965年12月29日に亡くなっているので、私の人生は山田耕筰と18日間だけ重なっていることになるようだ。山田耕筰研究は後藤暢子先生がいて、先頃評伝が出たし、音楽学会では山田耕筰を扱う発表がこのところ毎年のように何かある感じになっているの…

更新

3年ぶりにHTMLを手打ちして、FTPした。http://www3.osk.3web.ne.jp/~tsiraisi/musicology/index.html

Sinfonietta × Symphonette → Sinfonetta

シンフォニーに縮小語尾をつけたいときはどうするか。小さな交響曲(楽章数が少ない場合もあるし、編成が小さい場合もある)という意味では、イタリア語に遡った Sinfonietta という言葉が最も広まっているかと思う。そして小編成楽団が Sinfonietta を名乗…

オープンリールテープの手製インデックスはコピーできない

ラジオ、テレビのドラマ音楽のオリジナルテープを扱っていて気がついたのだが、オープンリールテープの編集は、比喩ではなく実際にテープを「切り貼り」するので、あっちこっちに白いテープが貼ってある。四五十年前のテープなので、粘着力が落ちて、再生し…

インドネシア1967

[本文はここへ移動 → http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20160220/p4 ]

盲人という他者

「かたち」の哲学 (岩波現代文庫)作者: 加藤尚武出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2008/08/19メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 3回この商品を含むブログ (8件) を見る モリヌークス問題は知覚の哲学のお題でもあるけれど、(1) 盲人の視覚は晴眼者にとって…

神話の解体

踊る昭和歌謡―リズムからみる大衆音楽 (NHK出版新書 454)作者: 輪島裕介出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2015/02/06メディア: 新書この商品を含むブログ (16件) を見る 少しずつ少しずつ読み進めて最後までようやくたどりつき、心に残るのは、本書が最後に…

吹奏楽の楽器編成

大栗裕の吹奏楽曲は、(まだ)世に出ていないのを含めると20曲くらいあるが、各曲の楽器編成を書き出してみると、色々考えさせられた。1960年代から1980年代は、シンフォニックバンドに向けて各団体の楽器編成が少しずつ変化しているし(一番わかりやすいの…

役者は舞台に複数回出て欲しい

今年は奇しくも夏休みに「楽しいオペラ」シリーズがあったわけだが、書くタイミングを逃していた話をひとつ書いておく。松本で上演されたベルリオーズは、まあ喜劇であって、音楽ネタとして一番わかりやすいのは合唱の場面でカペルマイスター氏が印象に残る…

朝日会館メモ

中之島3丁目 時代と建築の響き合い 「よみがえる朝日会館」 2015年8月28日(金) アサコムホール 主催:アサヒ・ファミリーニュース社 後援:朝日新聞社 協賛:竹中工務店 関電工 高砂熱学工業 協力:朝日ビルディング 1. 映像上演&トーク 若林あかね(映…

公開収録番組の空気感

オーケストラがやって来た DVD-BOX出版社/メーカー: TCエンタテインメント発売日: 2014/02/07メディア: DVDこの商品を含むブログ (3件) を見る 小澤征爾問題に自分のなかで決着を着けるには、やっぱりこれを見ておかないといけないのだろうと取り寄せて、な…

クランの支配

長野から名古屋へ向かう特急にのると本当に山のなかを電車が走って、それが少し開けて、見慣れた風景に変わったなと思ったら松本に着いていた。お城の脇の市立博物館で松本の歴史がわかりやすく説明されていて、明治に入って旧制中学が出来て、商業を振興し…

新幹線で喫煙

東海道新幹線は喫煙ブースがあって、その車両に喫煙者が殺到するわけだが、平日の喫煙ブースの男女比は7:3か6:4くらいなのに、夏休みの新幹線は、喫煙ブースが男(ほぼオジサン、オトーサン)で埋まっていた。どこがどうしてこうなるのか、すぐに理屈はわか…

大空港

というわけで大阪→東京→松本→大阪、3泊2日の旅から帰宅。ツィマーマンは、卓抜な「字幕アート」のおかげで作曲者が言う「Lingual」の構想が蘇った公演ということになるんだろうなあ(でも、ああいう技法による「意味の剥落」は、外国語だから楽に聴けると…

夏休み企画

7月の日経は佐渡裕の椿姫で、8月は中村功withだんじり・サンバ・宮川彬良。8月の京都新聞は沼尻竜典の竹取物語。我ながら、このラインナップで「演奏評」を成立させたのは結構頑張っていると思うのだが、……というより、こういう風に日々面白いことが起きてい…

小澤と大阪

第2特集の小澤征爾と昭和の日本のオーケストラについての記事は、今後繰り返し参照されねばならぬと思う。岩野さんの満州のオーケストラの本が朝比奈隆語りのスタンスを変えてしまったのに似た仕事、時が経つにつれて意味が増すに違いない労作だと思う。 音…

ベルリン・フィルの意義

戦火のマエストロ 近衛秀麿作者: 菅野冬樹出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2015/08/08メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 話のメインはもちろん戦時中のユダヤ人救済(レジスタンス)へのコミットメントだと思うが、ベルリン・フィルを取材…

博報堂

わが師 井口基成 どてら姿のマエストロ[ムジカ]作者: 田中正史出版社/メーカー: 音楽之友社発売日: 1998/12/10メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 田中正史はCM音楽で当てて博報堂と契約していたらしい。昭和40年頃の話。ざっくばらんで、内情をあ…

全知ではない語り手:スコット・マクミリン『ドラマとしてのミュージカル』

「18世紀=古典派/19世紀=ロマン派/20世紀=現代」という100年区切りの三分法(ほぼ19世紀末から20世紀初頭の芸術様式論に由来するような)じゃなくて、ワーグナーの前と後を対照するような枠組みを色々探し求める今日この頃。前のエントリーの総譜の段数…

総譜の段数

大栗裕は管弦楽を書くときには通常24段の五線紙を使う。(調べてみたら、「赤い陣羽織」や「夫婦善哉」のようなオペラも24段の五線紙に書かれていた。武智鉄二の創作歌劇シリーズは、小編成の室内オペラというコンセプトだったせいでもあるが。)一方、吹奏…

Rebirth

戦後日本の宗教史: 天皇制・祖先崇拝・新宗教 (筑摩選書)作者: 島田裕巳出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2015/07/13メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る オウム真理教を直接扱っているのは最後の章だけだが、本の構成としては、戦後日本の…

君が代論

ふしぎな君が代 (幻冬舎新書)作者: 辻田真佐憲出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2015/07/29メディア: 新書この商品を含むブログ (4件) を見る 書名はあれこれ批判を招いた橋爪・大澤コンビの本を連想させるが、中身はまっとうできれいに整理されているようだ…

70年後に明かされるということ

70年前の真性の迫害と亡命の物語、近衛秀麿がナチス支配下のドイツでどうやってユタヤ人音楽家を助けていたか、その足跡を追う話である。 戦火のマエストロ 近衛秀麿作者: 菅野冬樹出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2015/08/08メディア: 単行本この商品を含…

音楽に「言葉をかぶせる」:新井鴎子の音楽劇のデジタルな台本について

おはなしクラシック[1]くるみ割り人形、ペール・ギュント、真夏の夜の夢ほか (新井鷗子の音楽劇台本シリーズ)作者: 新井鷗子(新井鴎子),ソリマチアキラ出版社/メーカー: アルテスパブリッシング発売日: 2015/04/25メディア: 単行本(ソフトカバー)この…