2015-01-01から1年間の記事一覧

「羽」と妖怪人間

わが師 井口基成 どてら姿のマエストロ[ムジカ]作者: 田中正史出版社/メーカー: 音楽之友社発売日: 1998/12/10メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 関西歌劇団における武智鉄二の4回目にして最後の創作歌劇公演(1957年秋)のために「羽」(原作:小…

コロンボ世代

このミステリーがひどい!作者: 小谷野敦出版社/メーカー: 飛鳥新社発売日: 2015/07/30メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (8件) を見る オジサンたちは、なんだかんだいって、現実世界でコツコツ調べ物するのが無上の楽しみなのだよ。70…

1986年の副題

表現と介入: 科学哲学入門 (ちくま学芸文庫)作者: イアンハッキング,Ian Hacking,渡辺博出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2015/05/08メディア: 文庫この商品を含むブログ (10件) を見る 原題は「Representing and Intervening: Introductory Topics in the …

資料館のリアリティ

表現と介入: 科学哲学入門 (ちくま学芸文庫)作者: イアンハッキング,Ian Hacking,渡辺博出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2015/05/08メディア: 文庫この商品を含むブログ (10件) を見る 第1章で難航して、3回読み返してようやく、どういう方向へ話を展開し…

ごん狐

「ごん狐」の誕生作者: かつおきんや出版社/メーカー: 風媒社発売日: 2015/03/25メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 新美南吉「ごん狐」が国語教科書にはじめて収録されたのは1961年だった、との記述がある。とすれば、大栗裕が1962年に「ごん狐」…

柴田南雄と大阪

声のイメージ (岩波人文書セレクション)作者: 柴田南雄出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2013/10/25メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る1990年に出た本の再刊らしいが、大阪フィル40周年に寄せた文章(1987年)が収録されており、…

パラダイム・シフトの条件

表現と介入: 科学哲学入門 (ちくま学芸文庫)作者: イアンハッキング,Ian Hacking,渡辺博出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2015/05/08メディア: 文庫この商品を含むブログ (10件) を見る 「科学も一枚岩ではない」ということで科学史に取り組もうとすると、…

盆と滝川

近代国家の曲がり角で「学生」という特異な身分の集団が立ち騒ぐ、というと、日本の場合、滝川事件がその華やかな例のひとつとして知られるわけだが、あれは初夏に勃発して、全国に広がる気配を見せたのが、夏休みで学生が帰省したところで流れが変わったと…

1946年没

ファリャは戦間期に活躍した印象が強いが1946年まで生きていたので、まだ著作権が切れていない(はず)。2016年が没後70年なので、これから徐々に風通しがよくなるだろう。(しかし、おそらくChesterの楽譜に掲載されているのが出典と思われるシノプシスをも…

鼓膜と声帯

音響メディア史 (メディアの未来05)作者: 谷口文和,中川克志,福田裕大出版社/メーカー: ナカニシヤ出版発売日: 2015/05/18メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 「鼓膜が空気の振動を受け止める」という表象を得たところから現代へつながる音…

……

(そしてレヴィン版のモーツァルト「レクイエム」は、オーケストラも合唱もコンパクトな編成で様式感をはっきり打ち出さないと面白さが出ないと思う。)

「バーンスタインに似てきていました」

斉藤先生の指揮は小澤征爾さんや私や飯守泰次郎に受け継がれ、私の指揮は今、弟子の下野竜也らが受け継いでくれています。もっとも、小澤さんはアメリカでバーンスタインの教えを受け、帰国したときには指揮法もバーンスタインに似てきていましたがね……。(1…

テツラフ

私は結構本気でメンデルスゾーンを推しているつもりなのですが……、「メンコン」のイメージをアップデートできるような演奏はないのかと探したら、テツラフとヤルヴィの演奏がとてもいいんですね(NMLにあった)。 シューマン/メンデルスゾーン:ヴァイオリン…

総工費3600億円

ところで、1959年に着工して1964年の前回の東京オリンピックに間に合わせて完成した東海道新幹線の総工費は当時のお金で3600億円だったとウィキペディアに書いてある。(今の物価水準に換算したらいったいどれくらいなのだろう。)5年で完成したのは、土地…

ワーカホリック映画「天国と地獄」

天国と地獄[東宝DVD名作セレクション]出版社/メーカー: 東宝発売日: 2015/02/18メディア: DVDこの商品を含むブログを見る 黒澤明「天国と地獄」といえば、新幹線開通前で特急こだまが出てくるわけだが、以前テレビでその特急列車の場面からあと後半を見たき…

清濁の区別/gentleとviolentの区別

日本神道は教義なき儀礼宗教だ、と言われたりするようだが、それでも宗教学者は、日本神道として伝承される儀礼に、キヨメとケガレの思想を読み取ることができそうだ、と指摘したりする。清濁の区別を世界認識の基本に据える、というような感じでしょうか。…

ポリフォニーを「聴く」

というのは、おそらく、自ら歌いつつ他の声を聴く、という状態のことであって、すべての声の総和を聴くのとも、すべての構成音をサウンドの聴取によって聞き分ける/言い当てるのとも違う「行為/体験」だと思う。そしてこのようにポリフォニーを規定すると…

『サキソフォン物語』

前にここhttp://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20150601/p1で書いたほとんどの疑問は、ほぼこの本で解消されてしまいそうだ。 サキソフォン物語 悪魔の角笛からジャズの花形へ作者: マイケル・シーゲル,諸岡敏行出版社/メーカー: 青土社発売日: 2010/04/23メディ…

英国のナショナリズムと「人のいない自然」

ヴォーン・ウィリアムズの田園交響曲には人間が登場しない、というのは、最初に聴いたときから気になっているポイントで、おそらくこれがどこかでシベリウスにつながるのだろうと思うし、シベリウスを最初に評価したのは大陸ではなく英国だった、という話が…

フーガいろいろ

メンデルスゾーンの讃歌には合唱が通模倣っぽく歌い出す曲がいくつもあるが、実はバッハ風のフーガの様式でかっちり書いてあるのは1箇所だけ(だと思う)。1箇所はバッハ風になっているのだから、そういうのを知らない/書けないわけではないと思われ、「…

メンデルスゾーンの減七

メンデルスゾーンにとって「ヴェネツィアのゴンドラ」というお題は特別なものだったことがわかっているわけだが、(だって無言歌のなかでこれだけは作曲者自身がつけた標題だからね。で、既に無言歌を研究した博士論文というのが存在する。音楽史の話をする…

シェフのひとこと

大フィル定期のプログラムは、毎回最初に載っている井上道義のメッセージがいい。あの人の「らしさ」を上手くいかす場所を見つけたな、という気がする。(そして曲目解説だけでなく、訳詞まで片山杜秀(監修ということか)となっていたので、びっくり。そう…

サクソフォーンの現代が始まるとき

「1970年以後」というようなことを急に言い出したのは、具体的な理由があって、どうやらサクソフォーンの奏法ということを考えると、1970年にデニソフがロンデックスのためにアルト・サクソフォーンとピアノのためのソナタを作曲したあたりからサクソフォー…

上海バレエ・リュスの思い出

上海租界の劇場文化 混淆・雑居する多言語空間 (アジア遊学 183)作者: 大橋毅彦,関根真保,藤田拓之出版社/メーカー: 勉誠出版発売日: 2015/04/30メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る 朝比奈隆は昭和23年に小牧バレエ団公演の…

救世主アメリカ

ミシンと日本の近代―― 消費者の創出作者: アンドルー・ゴードン,大島かおり出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2013/07/24メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る ミシン王アイザック・シンガーの娘ウィナレッタがエドモンド・ドゥ・ポリニャッ…

グノーシス

グノーシス (講談社選書メチエ)作者: 筒井賢治出版社/メーカー: 講談社発売日: 2004/10/09メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 5人 クリック: 55回この商品を含むブログ (33件) を見る 「Tone pleromas」の語を黛敏郎はヴァレーズから借りたと語っており…

外山雄三と大阪

http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20150527/p1↑を補足するような話になるが、「私が大阪フィルと初めてお付き合いしたのが、1959年、朝比奈隆先生が、新しい作品をやれってことで、ストラヴィンスキーやバルトークなど近代曲を沢山させていただいた。そういう…

黛敏郎のマンボ

先の山崎正和の山村工作隊といい、1950年代には、私(たち?)の知らないものが、まだいろいろ埋もれていそうな気がする。輪島先生がマンボにはじまるニューリズム・ブームを見事に掘り起こしたわけだが、黛敏郎のトーン・プレロマス55でサクソフォーンがマ…

ソリストの受難

先週末から京都で欧米&国内から招待された学生さんたちの恒例の演奏会(半導体で得た巨万の富で数々の助成を行うローム財団さんこそが日本における「メセナの巨人」ですよねえ)を聴いて思ったのは、(1) どうやら欧州で「イケてる学生」は、ピアノであれ弦…

談話の補足

日経大阪版にいずみシンフォニエッタ大阪に関する記事が出て、最後に私の談話として「」にくくった言葉が出ているようですが、電話での記者さんからの取材時には、ここで引用されているコメントのあとで、ほぼ次のようなことを申し上げました。「新作の委嘱…