黒の階調:木之下晃

ヨドバシでカメラ書籍の棚をながめていたら、木之下晃に遭遇してしまった。

94年に出たムック本で、あとがきには「カメラといえばカラー全盛だが」とある。デジタルのことなど眼中にない『日本カメラ』である。

2009年に重版が出たのは、今も需要があるということなのでしょうか。

写真家のみなさんが作品とエッセイを寄せているなかに木之下晃がいる。

燕尾服の黒の階調をどのように撮るか、フィルムへのこだわりはもちろん、現像液も自家製スペシャルブレンドだ、というようなことを書いていて、木之下晃の写真のキャプションに

「ニッコール400mmF2.8・絞りF2.8・1/25秒」

というように撮影情報が入っているのは、音楽雑誌では見かけない光景で新鮮。

モノクロームこそが写真のクラシックである、と言いたいときには、木之下晃ですね。

ロリン・マゼールは木之下晃の黒を「オリエンタル・トーン」と形容したそうだ。輸入文化としてのクラシック音楽とモノクーム写真、戦後ニッポンの聴覚文化と視覚文化の交点に木之下晃がいる、というような構図で何かが言えそうだ。ニコンとオザワですからね。