金沢/センチュリー/シエナ:「シンフォニックバンド」の実体化?

バンド・ジャーナル1990年10月号で、シエナ・ウィンド・オーケストラの結成コンサートとCDリリースの話題が取り上げられている。

これってつまり、先日来こだわっております「シンフォニックバンド」という言葉が花火のように打ち上げられてからわずか2年で、理念が実体化したってことじゃないのかしら。吹奏楽の展開は速いなあ。

……と思って確認すると、この楽団の英語表記は、

Japan Symphonic Winds Siena Wind Orchestra

と言うらしい。たとえ話じゃなく、ほんまに「シンフォニック」が名前に入っとった。こりゃ、できすぎやでぇ。

ーーーー

そしてさらなる急展開。

同誌NEWS ANTENNA欄35ページの記事「シエナ・ウィンド・オーケストラが結成記念アルバム録音〜シエナ・クラシカル・コンサート 7月2〜4日・IMAホール」には、このようにある(「(雲)」表記の匿名記事)。

さきごろ結成されたばかりの「シエナ・ウィンドオーケストラ」は、さまざまな意味で関係者の間に広く話題を投げかけている。

そのひとつが、まず吹奏楽団であること。そしてもうひとつは、メンバーが21歳から27歳までの若手演奏家によって組織される団体だということ。大阪に新しくオーケストラが誕生し、金沢にアンサンブル金沢といった室内オーケストラが生まれるようなオーケストラ・ブームの中での今回の「シエナ・ウィンドオーケストラ」(吹奏楽)の結成は、やはり、日本のアマチュア吹奏楽の異常なまでの高まりと無関係ではあり得ない。そういうニーズを反映したものだろうと思われる。

現在、日本の管打楽器界には、たくさんの才能ある若手演奏家がいて、彼らによってソロ活動やアンサンブル活動がさかんに行われている。そうした人たちの多くは、技術的にも音楽的にも非常にしっかりとしたメソードをもっていて、さらに豊富な音楽情報を身につけていたり、中には各種の音楽コンクールに入賞したりしている。そういう若手演奏家たちの中からオーディションによって選び出し組織された「シエナ……」だから、当然、その活動は吹奏楽関係者に大きな期待を抱かせずにはおかない。「どんなサウンドだろうか……」「演奏は……」「パワーは……」「彼らのソロは……」と、いろいろな点から強い関心が寄せられているのである。

オーケストラ・アンサンブル金沢(1988年設立)や大阪[現・日本]センチュリー交響楽団(1990年設立)と、シエナ設立を並べて論じる観点があり得たとは!

「民主化」要求に端を発すると思われる1970年代以後の日本の吹奏楽の急展開は、いろいろなトピックと絡まりすぎていて、オジサンは、もう、お腹いっぱいになりつつある。

ーーーー

青少年(←気恥ずかしい言葉だが)のための活動は、ただでさえ、夢とか無限の可能性(ポジティヴであれネガティヴであれ)が現実原則から切り離されて猛スピードで展開する傾向があると思うのだけれど、「日本の吹奏楽」は、大澤真琴の言う“虚構の時代”にむちゃくちゃたくさん色んなものを吸い込んでいて、部外者には見えないものが見え、聞こえないものが聞こえる状態になっているような気がしてきた。

この時期のサブカルチャー(←という言葉遣いで合っているのだろうか)は、こういうものなのかもしれないけれど、ここから現在までに、さらに24年、道半ばである。

こんなことになるとは思わなかった。

3年周期でメンバーが入れ替わるから、人類よりもはるかに寿命の短い生物が急速に世代交代を果たしているようなところがあるのかしら。セミとかクワガタムシとか、そんな感じ。

アイドルとかマンガとか、若者文化の本丸の動きの激しさは、たぶん、こんなもんじゃないんですよね。みなさん、よーついていかはりますねえ。ほんま、感心するわ。

子どもの相手は、適当なところで切り上げたいのに……。