一線を越える

音楽団体の創立○○周年というと、「皆様のご愛顧のおかげでここまで来ました」と舞台の上からお客様にご挨拶するスタイルが定番だが、

とある音楽堂が創立○○周年に各所へ頒布している文書を読むと、「出資者の皆様、観客は今このように考えており、有識者はこれまでの取り組みをこのように評価しております。変わらぬご支援をよろしくお願いします」というスタイルになっていた。

営利企業で言う「株主への説明責任」だな。

「経営」(といっても、その音楽堂は別に広く一般からファンドを募る形態ではない)を一般客に広報する、ってのは、新しいといえば新しいのかもしれない。

知ってどうなるものではないので、ああそうですか、だが。

ちょうどPTAが学校の運営を見守るように、観客には私たちの経営状況を見て欲しい、ということだろうか。

公共施設だったら、市民の税金で運営されているのだから市民オンブズマンの意義はわかるが、民間施設だからなあ……。

いっそ人事や財務、組織図を含め、すべて公開して社会事業としての透明性を確保します、まで突き進むとしたら、民間企業としては画期的、かもしれないが、それができるかどうかは親会社との関係がどうなっているかによるだろう。

京都市や大阪府とそこが運営していた交響楽団、大阪市とそこが運営していた吹奏楽団の場合は、自治体の行政から独立することで「民間経営」に近い柔軟な戦略と機動力を確保した(もしくは確保しようとしている)。

民間音楽堂が公共性を肩代わりしようとするのは、一見似ているようだが、方向性やそのために必要な作業は、実はそうした公共音楽団体の民営化とは正反対なのだと思う。

できるのか?