資料館のリアリティ

表現と介入: 科学哲学入門 (ちくま学芸文庫)

表現と介入: 科学哲学入門 (ちくま学芸文庫)

第1章で難航して、3回読み返してようやく、どういう方向へ話を展開しようとしている人なのか、感じがつかめてきたところだけれど、どうやら、普遍的で歴史を超越した科学の真理みたいのを棄却した先で、専門家集団の信念の拠り所を探すときに、理論の真偽/対象の実在・非実在という議論の鍵を握る事柄として、「実験室のリアリティ」みたいなものがあるんじゃないか、という話になっていきそうな気配がある。

仰げば尊し 幻の原曲発見と『小学唱歌集』全軌跡

仰げば尊し 幻の原曲発見と『小学唱歌集』全軌跡

で、この本には、三人の著者が伊那へ伊沢修二の遺稿資料を調べに行ったときに、これまで何人もの研究者が見たはずの資料から新たな発見をするくだりがあるのだが、資料研究には、「実験室のリアリティ」に似た「資料館のリアリティ」のようなものがありそうな気がします。

これを迂回して、書斎で「プラグマティズム」とかを論じても、それはやっぱり弱いんじゃないかと思うのです。

民謡調・賛美歌・合唱曲の和声・対位法の特徴を語るゴチェフスキーの文章が勉強になる。

(言葉遣いに引っかかって、議論の進め方が「本質主義」で認めがたい、とかなんとか言い出すバカが出てきそうだが、「本質主義」風じゃなく読み替えて、必要な情報を取り出せば済むことである。)