オペラ「天守物語」と在東京関西人

感想を書くタイミングを逃したが、先月、兵庫芸文で観て、泉鏡花原作ということだけでなく、水野さんの作曲を含めて、武智鉄二好みの作品だなあと思った。東京では、兵庫芸文に先立って、初演団体の日本オペラ協会が新国立劇場で上演したそうだけれど、皆さんにちゃんと観ていただけたのだろうか。

武智鉄二が東京に移ったあとの仕事を、映画に着目してアヴァンギャルドとレッテル貼りするだけでは不十分なのだろうと思うのだけれど、関西に住んでいると、どこから手を付けて、何をどこでどういう風に拾っていけばいいのか、途方に暮れる。

東京には、ちゃんと武智鉄二の骨を拾おうという人はいらっしゃらないのでしょうか。そんなはずはないと思うのだけれど……。

戦前や占領期の大阪から、高度成長・バブルの東京へ、というのは、大阪発祥で今は東京に本社を移転した企業がたくさんあるのだから、ちゃんと論じられて良いテーマだと思う。「昭和後期の在東京関西人とは何だったのか」ということです。

例えば、武智鉄二が関わっていた時代の日本オペラ協会の代表作、三木稔作曲「春琴抄」は、「在関西東京人」の原作を「在東京関西人」が作曲したオペラと呼べそうで、武智鉄二が演出してNHKで放送されたことがあるらしい(映像未見)。


(戦後の「在東京関西人」というテーマは、19世紀後半に京都から江戸城に移住して、今も東京政府の通常の戸籍に登録されていない御一族の問題と、ひょっとすると絡まり合ってしまうのかもしれませんが。)