「コッピーにあらず」(2)

歴史のゆらぎと再編 (岩波講座 現代 第5巻)

歴史のゆらぎと再編 (岩波講座 現代 第5巻)

最後に、音楽代表という感じに、音楽史記述に関する輪島祐介先生の論考が収録されているが、ニューミュージコロジー風の、やや教条的な「カノン批判」になっていて、『踊る昭和歌謡』の序文の地点から随分と後退したかのように思えてしまう。

(2016年にニューミュージコロジー風の議論を読むと、「北米の欧州へのコンプレックスがこじれて出てきた議論に私たちが全面的に依拠する必要はなさそうだし、そのあたりを、これから清算していくことになるんだろうなあ」と思う。)

踊る昭和歌謡―リズムからみる大衆音楽 (NHK出版新書 454)

踊る昭和歌謡―リズムからみる大衆音楽 (NHK出版新書 454)

岩波の『揺らぎ』は2015年11月刊行、NHK出版の『踊る』は同年2月刊行だが、前者に揚げられている参考文献は2010年の演歌論や同年の論文までなので、もしかすると、執筆は『揺らぎ』のほうが先なのではないか?

(この種の共著アンソロジーは、何かがボトルネックになって刊行が遅れることがよくあるようだし。)

その後の5年で、「創られた説」やニューミュージコロジー(基本的に前世紀末の議論である)だけではうまくいかないところに上手に分け入ったのが『踊る』の序文だと思うので、「音楽史とは?」を書くのが早すぎたんじゃないか、という気がする。

『踊る』の地平をフィードバックした議論を5年後に読みたい。

独立行政法人は、帝国大学(風の岩波講座)のコッピーにあらず、ということで。