鋭い耳

徳丸先生のミュージクス本には、人物評として「鋭い耳を備えた人」という言い方を何度か出てくる。研究の方法の適否とは別に、耳が鋭いことで成果があがる、ということは確かにありそうに思う。

そういえば、柴田南雄も、演奏批評に関連して、聴く力は一般に思われている以上に個人差が大きい、と指摘している。絶対音感云々で言われるような能力差の話ではなく、ヒトは加齢で高い周波数が次第に聞こえなくなる、私もそうだ、という経年劣化の話になるところが、自然科学者柴田南雄らしいのだが、ともあれ、ひとつの音楽・演奏に様々な感想が生まれるのは、聞こえ方の個人差に起因するところが実は少なくない。確かにそうだと思う。