オーケストラのJALパック

「顎足付」の話の続きです。

ここ数年(主に東京の)オーケストラの海外遠征が増えているのは、私の知る限りでは、各オーケストラに出入りしているマネジメント事務所主導の企画ですよね。海外から人を呼んだり、海外に日本の人を送り出したり、音楽マネジメントの業態が旅行代理店に似てきているように見えます。

個人の海外パックツアー(それが「JALパック」と商品名で呼ばれた昭和は既に遠い過去になってしまったが)は、それ自体良いも悪いもなく、目的が観光であれ何であれ、望む人はやればいい。オーケストラだって同じことだ。お金を貯めて、あるいは集めて、団体海外旅行を何かの記念でやる、というのであれば、それはその団体の自由だ。

(例えば京響は、設立以来、10年ごとに海外ツアーを組む、というのが恒例になっていて、粛々と「決まり事」が執り行われる様子は、伝統がこういう風に創られるのだなあ、と、古都の知恵を垣間見る気がします。)

マネジメント事務所がお膳立てしたパック・ツアーは飽き足らない、とか、そのような「日本人旅行者」の姿は、現地に住んでいる者から見ると滑稽である、とか、思うのであれば、そしてそのようなビジネスのお先棒を担ぐのは嫌だと思うのであれば、あなたが別のビジネスモデルを立てたらいい。(あるいは、マネジメント事務所に別の商品プランを提案する、とか。)

公然と行われている商行為に対して、あたかもそのような実態がないかのようにほおかむりをしておいて、ツアー客の「モラル」や「心構え」を上から目線で叱責するような態度は、その商行為の尻馬に乗っている、と言われても仕方あるまい。