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「海道東征」の聴き方

産経新聞主催で大阪フィルによる海道東征コンサート。昨年に続く2度目ですが、端的によくできた合唱曲なので、広く歌われるようになればいいと思う。合唱団がオーケストラと共演する演奏会はレパートリーが固定しがちで、その最たるものが年末の第九だと思いますが、その対案として、とりあえず、毎年年末に海道東征を歌う、というのをやってもいいんじゃないだろうか。

気になることのひとつは楽譜。たしか東京芸大が昨年かなりしっかりした校訂を行ったと聞いているので、合唱団が楽譜を容易に入手できるように出版してもらえないものかと思う。

[追記: と書いてから今日のプログラムを見直したら、既にアカデミアからヴォーカルスコアが出ているようですね。興味のある人は早速買いましょう。]

ちなみに、今回は前プロがモルダウと大栗裕「神話」(吹奏楽のための神話の管弦楽編曲)。「神話」は吹奏楽であまりにも有名ですが、私は管弦楽版の楽器法も詳しく研究する余地があると思っています。(楽譜も先日ティーダ出版から刊行済です。)

「海道東征」の聴き方・楽しみ方にはコツがある気がします。といってもイデオロギーの話ではなく、あの作品の唱歌風のメロディーをゆったりしたテンポでかみしめるように繰り返すスタイルは、客席で他人事として鑑賞するよりも、覚えて一緒に歌う(つもりで聴く)のがいい。たとえば「海ゆかば」のようなラジオ国民歌謡や戦後の「みんなのうた」は、聞きながら一緒に歌うことを想定しているじゃないですか。信時潔の唱歌カンタータは、プロテスタントのコラール/賛美歌をも踏まえながら、そのように「聴きつつ歌う」作品だと思う。「はる〜かなり〜」のC-durのハーモニーとか、終曲で再現される頃には自然に聞き覚えて歌える。「歌う国民」(渡辺裕)の歌謡とはそういうものだと思う。