ジャコパス

10数年前にジャズのライブによく通った時期があるが、それは個人的なきっかけからのことで、岡田暁生と張り合おうとしたわけではないし、ちょうど『憂鬱と官能を教えた学校』が刊行された頃だが、この本を読んだのは少しあとだったように記憶する。

(岡田暁生がジャズにハマっていると知ったのは随分あとのことで、大久保賢を連れてロイヤル・ホースへ行くとか、なんて恥ずかしいことをやっているんだこの人たちは、としか思わなかった。)

あるとき、地元の小さなライブハウスで、アフターアワーズにブルースハープ吹きが畏敬の念を込めて「ジャコパス」という言葉を口にして、会話がひとしきり弾んでいたのだけれど、私には何のことかわからず、「ウェザー・リポートですよ」とヒントをもらったのだけれども、そのときはそれっきりになった。

さっきバードランドなどをひとしきり聞いて、なるほど、この曲を岩井直溥が編曲した吹奏楽で知っているように思うのは、モーツァルトのコンチェルトを弾く姿だけでチック・コリアを語るのと同じくらい野蛮なことなのだろうと思った。