ブーレーズ殺し

ところで、学生さんと調べていてわかってきたのですが、スペクトル楽派というのは、グリゼーとミュライユが独自に70年代にやっていた活動が、ブーレーズを所長に据えたIRCAM設立の頃に事後的に「スペクトル音楽」としてオーソライズされた、というのが真相のようですね。どうやら、ブーレーズの今太閤・田中角栄風の成り上がり・一人勝ちへの対抗馬として次の世代を担ぎ出す、いかにもフランス的な「ブーレーズ殺し」であるらしい。

ブーレーズがメシアンの元を離れた放蕩息子なのに対して、グリゼーやミュライユはメシアンのクラスで学んでメシアンを師と仰いでいることを考えても、「スペクトル音楽」という概念は反動的だと思う。

三輪眞弘は、そんな風にブーレーズが殺されたあとのフランスで学んだ人なんですよね。そのあたりを押さえないで、彼の「録楽」批判とかだけに着目すると、色々判断を誤ると思う。