「音楽現代」3月号が届いていました。今月のCD評は東京クヮルテットのベートーヴェン「ラズモフスキー弦楽四重奏曲」と、アファナシエフの2005年サントリホールのライブ盤(オール・ベートーヴェン)の2つを担当しました。
新メンバーが入ってスタイルが若返った東京クァルテットも予想以上に面白かったのですが、ここでは、やはりアファナシエフ。
具体的にどんな演奏(と私が聴いたか)は記事に書きましたし、アファナシエフのピアノをまだ一度も聞いたことがない、どんなピアニストなのかイメージが沸かないという人は、(万が一そういう人がいらっしゃるとしたら)教養として何か一枚聴いておくべき。話はそれから。それくらいに特別な人ではあるでしょう。
その上で、
こういう演奏を人はどう思うものなのか、好きなのだろうか、CDの売り文句のように「最後の巨匠」と崇拝するのだろうか、というのは、とても気になります。
時空と作品が強い力で異形に歪んでいて、なおかつ、「この曲はこうであらねばならない」的な強度の演奏ですが、哲学や観念がそうさせるのか、個人の信念なのか、芸術の設計プランなのか、強烈な表現意欲なのか、というところが不透明な「闇」で、何度聞いてもよくわからない。共感されることを本質的に拒んでいる人のように感じます。
これがソ連を経験した人の生き様ということでしょうか。前に書いたショスタコーヴィチについての感想と似た話になってしまいますが……。