ギリシャ諸々

トロイ [DVD]

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これも「ターミナル」と同じ2004年封切りで、当時、CG使いまくりの予告編は映画館でみた。(そのあとイーストウッドの硫黄島二部作をみたときに、アメリカの艦船が太平洋を埋め尽くす絵はトロイみたいだなあと思ったのを覚えている。)

なんかネットを検索するとホメロスと違ってるところがあって非難囂々という話が出ているけれど、「Uボート」や「シークレット・サービス」や「エアフォース・ワン」の監督さんがギリシャの神々に物語のキャスティングボードを握らせるわけないですよねえ。

その意味では、ニーベルンクの指輪をラブ・ロマンスとして描ききった池田理代子先生に似ているかもしれない。

アガメムノンのギリシャはブラピのアキレスが辟易するようなクソ国家で(一匹狼アキレスはクロサワ映画のような描かれ方だなあと思ってしまう)、オデュッセウスは社内融和最優先の冴えない中間管理職。トロイのほうが文明国で王様も立派である、文明は東方からやってくる=オリエンタリズムの原型、ということがよくわかる作りだから、これでいいんじゃないだろうか。

(ピーター・オトゥールは、アラビアのロレンスのころは自分が帝国主義の駒になっているのを見て見ぬ振りする心が虚ろなインテリ青年だったけれど、アポロンに帰依して立派な「賢者」になりました。そういう裏ストーリーも入っているし、トロイ落城のどさくさで、ちゃんとエネアスも登場する。)

アラビアのロレンス (1枚組) [DVD]

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ギリシャ語・ラテン語のことをざっと調べて、どうやら和製「モーラ」概念で言うように「長母音が短母音の2倍の長さである」と明言している文献があるわけではなさそうな感触なのですが、どうなんでしょう。

韻文の韻律は、そういう量的な概念なのかどうか。

CDエクスプレス 古典ギリシア語

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ホメロスやソフォクレスの一節の朗読CDが付いている入門書を本屋で見かけて、最後のほうにエディプス王と羊飼いの問答のところ(問答が切迫すると1行がエディプスと羊飼いの台詞に分割される)も入っているわけですが……、

ボーカロイドとかフォルマント兄弟とか、ああいう日本発の人工音声技術/人工音声パフォーマンスの「多言語対応」はどういう風になっているんでしょうね。ボーカロイドは、音素データさえ揃えば文字におけるユニコードのように現行のフレームワークで多言語に対応できるのかどうか。こういう技術/パフォーマンスが内向きかどうかを測るひとつの目安だと思うのですが、どうなんでしょう。

初音ミクの声優さんから古典語をサンプリングするのは荷が重そうですが、そのうち、ギリシャ語の美少年キャラ・パトロクロスのクルーナー唱法とか、国際派中国女性キャラ・テレサが歌うイェーライシャン、とか、そういうことになっていくのか?

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……とあれこれ考えるうちに、そういえば、ストラヴィンスキーの「エディプス王」のラテン語の素性は、伝えられる情報のかぎりではいかにも怪しげでデタラメみたいなのだが、実際のところはどうなってるんでしょうね。

ストラヴィンスキーがいいかげんなことをしたのが呼び水になって戦後のクセナキスのギリシャものとか、松下眞一の原始仏教ものが出てきたと考えれば、デタラメでいいかげんな男がとりあえず何ややらかして突破口を開いてしまうのは、ありなのかもしれないけれど。

松下真一 作品集-現代日本の作曲家シリーズ30

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  • アーティスト: 秋山和慶,岡田晴美,芳野靖夫,東京混声合唱団,松下真一,宮本昭嘉,読売日本交響楽団,高橋悠治,横山勝也,前田優継
  • 出版社/メーカー: フォンテック
  • 発売日: 2006/03/21
  • メディア: CD
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