時制と完了

そういえば、会話のドイツ語には現在完了 (habe .... ge---t) が頻出する。書き言葉の記述であれば過去形を使うようなことでも、会話では現在完了で済ませてしまっていた印象がある。ひょっとすると、外国人向けに、敷居を低くするために過去の事柄はとりあえず現在完了で言っておけ、と語学学校が教えることにしていたのかもしれないけれど、それだけでなく、おそらく現代の会話のドイツ語は、過去形を多用すると、正式で妙に改まった感じになる、あるいは、簡潔に物事を言い表す報道(ニュースとか)でしかそういう言い方はしない、ということになっているんだと思う。

日常会話には不自由しないけれど、文章が書けない留学生がいたのは、ひょっとすると、ドイツ語は会話と書き言葉の落差が大きいせいかもしれない。

書かれた文章は構文に凝る一方、会話のドイツ語は、とりあえず Ich habe と言っておいて、動詞は完了形で最後に置く、みたいなリズムで会話が進む印象がある。

英語やフランス語ほどには、時制の制御に重きを置いていないような……。

書かれた文字だけでドイツに接すると、堅苦しい国、という印象が誇張されてしまうんじゃないか、ということでもある。