美学者のゼロ年代

別に美学は芸術のことだけ扱っているわけじゃないけれど、世間ではそういうことを期待されているようなのでこの本は芸術を取り上げます、と、ものすごく素っ気ない調子ではじまって、「西欧の近代」というのは、つまるところ「人間的な」、あまりにも人間的な時代だったんじゃないか、とか、「近代の美学」について現在形で語る人が今もいるけれど私は「近代の美学はこうでした」と過去形で書きます、とか、「アートはセンスだ」と言うときのセンスはメタファーだ(感覚・知覚そのものじゃないから)、とか、平易な物言いで素っ気なく書いてあるのが、今読むと面白い。

どうやら出てすぐに買っていたようなのだけれど、新書ブームがはじまろうかというゼロ年代の入り口、2004年の本は、90年代の美学辞典とは雰囲気が違うけれど、どうしてそういうことになったのか。当時の私はそこには興味が湧かなかったんだろうと思う。

美学への招待 (中公新書)

美学への招待 (中公新書)