2006年京フィルの武満徹特集、マーラー「大地の歌」、ショスタコーヴィチ特集の曲目解説

京都フィルハーモニー室内合奏団http://homepage2.nifty.com/kyophil/の昨年の定期公演から、武満徹特集(4月)、マーラー「大地の歌」(10月)、ショスタコーヴィチ特集(11月)の曲目解説全文を掲載しました。

京フィル様、全文掲載をご快諾いただき、ありがとうございました。

以下、補足的なコメント。

●武満徹

武満徹の室内オーケストラ作品は、昨年秋に他の団体でも演奏され、その時に感想をあれこれ書きました。

こちらとしては、既に春先に京フィルの解説を書くために、当然楽譜も全部チェックしましたし、それなりにあれこれ調べていたわけです。秋口の某団体に関する発言は、感情論や漠然とした印象ではなく、春先以来、武満徹について私なりの色々と考えていた、その上でのものであることを、改めて、この機会に言っておきたいと思います。

京フィルの演奏会では、野平一郎さんと共演した「カトレーン」が強く印象に残りました。

●マーラー

「大地の歌」の解説は、コンサート前に読むには、ダラダラと長く書きすぎたと反省していますが、

グスタフ・マーラー(1860-1911)は、通俗性を排除する孤高の人ではなく、むしろ、進んで通俗を引き受けることで可能性を切り開く音楽家だったように思われます

という一文をどうしても入れたいと思って書きました。

●ショスタコーヴィチ

ショスタコーヴィチについては、書籍でもネット上でも、非常に細かく聞き込んで書かれた文章が最近たくさん出ています。

私としては、「そんなにソヴィエトに不同意なのに、この人はなぜ逃げなかったのだろう?」という素朴な疑問がありました。「ソ連/社会主義=悪」であって、ショスタコーヴィチはソヴィエト当局に抵抗しつづけたから「善」=ぼくらが共感できる(共感していい)人、というのは、話を単純化しすぎではないか、とも思います。

ただし、ショスタコーヴィチは、亡命したストラヴィンスキーやラフマニノフと違って、ロシア革命そのものには共感していたと思われます。[……]のちのスターリン体制との確執は、反ソ・反体制というより、左翼内部の苛烈な路線対立に由来すると解釈すべきでしょう。

本人は、ソヴィエトの外に出れば救われるとは考えていなかったはずです。後半生の虚無感は、むしろ、西側にも東側にも、地上のどこにも心を許せる場所を見いだすことができず、いわば、虚空にメッセージを発する心境だったように思われます。

京フィルの演奏、上野真さんの弾き振りによるピアノ協奏曲第1番は圧巻でした。