日本ワーグナー協会機関誌

ワーグナーシュンポシオン2014

ワーグナーシュンポシオン2014

http://www.wagner-jp.org/about/index.html

公式サイトの情報は一部古いようですが、部外者としてもわかることとしては、

(1) 1980年4月設立。

(日本におけるワーグナー受容の歴史から考えると意外に新しい、と思って調べてみると、日本モーツァルト協会が1955年(モーツァルト・イヤー前年)の設立で飛び抜けて早く、日本アルバン・ベルク協会1985年設立、先頃正式に解散した日本ブルックナー協会も1978年頃設立のようなので、「作曲家協会」は、1980年前後、もしくは昭和50年代の日本のクラシック界(のセレブ層?)の一種のファンクラブもしくは社交クラブで、日本ワーグナー協会もそのひとつ、ということになるのでしょうか。

まだ留学前の岡田暁生が、今思えばあれこれ設立されたばかりの協会の情報を集めていたのか、実際にアプローチしたのか、「モーツァルト協会というのはこうで、ベルク協会はこんな風だ」と言っていたことがある。ワーグナー協会は独文学者が中心で出版に強く、独文学と音楽をつなぐ回路として機能している印象がある。)

(2) 翌年から機関誌を刊行。

  • 『年刊ワーグナー』(福武書店/音楽之友社、1981-1991) *4冊目の『年刊ワーグナー1984』に三宅幸子「日本ワーグナー協会の歩み -- 1980-1983年 --」という報告があり、翌年からは巻末にその年の協会の活動報告が掲載されている。
  • 『ワーグナー・ヤールブーフ』(東京書籍、1992-2001) *礒山雅先生が編集長だった時代というのがこれ。
  • 『年刊ワーグナー・フォーラム』(東海大学出版会、2002-2011) *公式サイトの書籍紹介ページはこの時期で更新が止まっている。
  • 『ワーグナーシュンポシオン』(東海大学出版会、2012-) *Amazonで検索して、2012、2013、2014年が順調に刊行されていることがわかった。

順当に行けば2022年にまた誌名を変更するのだろうと思われるが、どういう名前になるのだろう。過去4つの例から勝手に法則を推測すると、奇数番目は頭に「年刊」がつく、偶数番目は、日本語の外来語としてこなれていないドイツ語を使う(ヤールブーフ、シュンポシオン)ということのようなので、今度は「年刊ワーグナーほにゃらら」だろうか。

ちなみに、「ワーグナーシュンポシオン」は、Amazonの書影をみるかぎり中黒で区切らない表記を採用しているようで、各種図書館OPACもそうなっている。

書名等は13文字以内に収めるのが常道とどこかで聞いたことがあるが、「ワーグナー・ヤールブーフ」も「ワーグナーシュンポシオン」も12文字なので、もしかすると、日本の出版界に厳然と存在する“13文字の壁”に阻まれて中黒(・)を落としたのだろうか。

(「年刊ワーグナー・フォーラム」の中黒入り13文字の名称を使った時代に何か不都合が生じた、とか?)

しかし思うに、そのような悪しき慣習に唯々諾々と従うなどということではワグネリアンとは申せまい。是非、次に偶数番目が来る2032年には、「楽劇」の奏でる無限旋律の如く、切れ目のないカタカタぶち抜き13文字以上で、真の機関誌名かくあるべし、の範を示していただきたい、と無責任な野次馬の感想を抱いた。