make-believe

Mimesis as Make-Believe: On the Foundations of the Representational Arts という書名を見て、「操作できる電子は実在する」(ハッキング)という言い回しを思い出したのですが、make believe は「ごっこ遊び」を指す熟語なのだとして、逐語的な「信じさせる」という意味合いが残っていたりはしないのでしょうか?

その意味合いが生きているとしたら、「ミメーシスってのは要するにごっこ遊びだよ」と欧州が古典的教養に登録したギリシャ語を米国の日常語に解きほぐすと同時に、「人は物真似を信じる。それが表象芸術の基礎だ」という主張を書名に込めたんじゃないのかなあ、と思ったのですが、これは誤読でしょうか。「人は物真似を信じる」という言い方だと、いかにも英米系の知的風土から出てくる主張に見えるのになあ、と思うのですが……。

(そして、序文で著者は「fictionの語をなるだけ使わないようにしようと思う」と宣言しているわけですが、それにもかかわらず、本書の主張は「フィクション論」に分類されるのでしょうか? 著者の宣言に逆らってまで「フィクション論」というジャンルが実在するかのように研究史を分類する make-believe は、どこかしら、英米系というより、この島に特有の知的風土のような気がしてならないのですが……。)

フィクションとは何か―ごっこ遊びと芸術―

フィクションとは何か―ごっこ遊びと芸術―