インターフェースの改良と軍略としての占領

iPhone の音声入力は、優秀と喧伝される OK Google を含めて、現状では、指先で画面を突っつく触覚と視覚を組み合わせた入力方式より便利な場合がある、という程度の、相対的なインターフェースの優劣の話のような気がする。

たぶんこれは、五感・知覚による出入力の領域に焦点を合わせて AI が開発されている現在のトレンドの典型のひとつで、その意味で、これは人間と囲碁や将棋ができるプログラムの登場と同じ時代の技術で、ブレークスルーという感じはしない。

五感・知覚・認知を制する者が世界を制するかのように思いなすのは、それを肯定して臨界点が近いと夢想する人たちにしても、AI の台頭を恐れる人たちにしても、拠点を結んでせいぜい「線」として侵攻することができない物理的軍事力を、あたかも、「面」としての相互の領土の「占領」が可能な技術であるかのように語る話法を連想させる。

物理的軍事力は、「面」として展開することが不可能だからこそ、制海権や制空権、さらには、放送等による情報の放射といった別種の、virtual と形容することができそうな技術を重視するわけですよね。現状の AI をめぐるプロパガンダは、そういうのと似すぎている。発想が20世紀だ。

(20世紀的な手法が今なお有効なのか、もはや無効なのか、というのは別の話であるとして。)