2016-01-01から1年間の記事一覧

環境に埋め込まれたヴァーチャル

据え置きのデスクトップ端末を有線無線でつなぐコンピュータネットワークは、インフラ部分が昔からずっとUNIXベースだからファイルやフォルダ(ディレクトリ)といったツリー状のメタファーを介して操作することになっている。年度末の卒論修論指導で、どの…

脱青春

いずみホールに行ったのでJupiterをもらってきた。シューベルトの連載の最後の2回は、あまり感心しない。31歳のシューベルトはロマン主義の出口を見つけかけたところで死んだ、というのがシューベルト研究の定説になりつつあると思うのだが、日本のクラシッ…

出現頻度

ハロウィンのときにネコを集めようとしたら、あまりにもたくさん出るので収集がつかなくなった。赤い帽子の出現頻度はそこまでではないけれど、普通の移動で一日に数回ずつ遭遇するのでどうなることやら。今度は期間も長い。一度ゲームを離れた人たちを呼び…

タッチパネルと単純作業

ポケモンGOをdisったり、ハマった人が自嘲するときには「膨大な単純作業」というワードが使われるようだ。文字の読み書きもまた、スマホでは「膨大な単純作業」に還元されるので、スマホをいつどこでどのように使うか、という話に帰着する気がします。スマホ…

課題の設定

専業主婦が圧倒的に有利なバランスのゲームに「かわいい」を増量するマーケチィングをかぶせているが、メタとかコスプレとか、一気に全部ではない出現場所と頻度の調整とか、プログラミング上のチャレンジがあるように見える。安眠よりも、むしろ技術の哲学…

At home

茨木の端のほうでも寝床からこんな光景が見える(=アーバンな錯覚への補正)。追記:そして孵化。寒いからといってベッドに籠もらず10km歩こう!

俗語文学史

ラテン語との対比、ギリシャ文芸の復興といったトピックを視野に入れて中世からバロックの俗語文学をたどろうとしたら、ドイツ文学を単体で語るのは難しそうですね。フランク王国が東西に分かれる前は今で言うドイツとフランスが一体だったのだし、その後も…

阪急梅田の permanent

学問上のキラキラとは関係なく駅界隈はキラキラして、「ハーフリアル」(←仮想、拡張、ハーフ等々キラキラ学問は目新しい言葉で時を稼ぐ)なのかもしれない赤い帽子が似つかわしいと思われ、駅の北側のは好ましくもcp10であった。進化を促す。 Raichu evolve…

詩形の効力

考えてみれば、母音の長短をさほど重視しない強弱アクセントで話されるゲルマン諸語で、イアンブスやトロカイオスを語るのは奇妙なことで、ヨーロッパの韻文におけるラテン文学の影響(継承)はさほど自明ではない気がする。そしてこれはさほど自明ではなさ…

だめ押し

真田丸を見直すと、「ずんだ餅はいかがかな」と声を張って言ったあとで、間を置いて、有働さんのナレーション(ずんだ餅の語を平気で無視する口調なのはそうでなければならぬ)にかぶるタイミングで、もういちど声を落として「ずんだ餅……」と言っている。こ…

翻訳者という神官

『英詩のわかり方』で阿部公彦は、日本の外国文学者が詩の翻訳を手がけるのはカトリックの司祭に似ている、と書いている。うまい比喩だと思う。音楽学者がオペラやリートのコンサートで訳詞の字幕を作るのも、祭儀に神官が召喚されるのを思わせる。翻訳が神…

ドイツの「民謡」と韻律

昨今の若者の「運動」の盛り上がりを受けて柴田翔が東大の学生運動を書いて芥川賞を受けた小説に言及した文章を見かけるが、柴田本人はその後ドイツ文学者になった。彼が東大教授として編集したドイツ文学史の概説書を読んだら、「近世」の詩としてハンス・…

終わり間際の減速で餅を食う

ロンド形式やロンド・ソナタにまとめられた速い終楽章で、コーダの終わり間際に急ブレーキがかかって既存主題を回想するのは、小岩信治が言う「緩から急へ」の演出の一種で、終楽章ではなく変奏チクルスについてだが、モーツァルトのトルコ行進曲付きソナタ…

うたとドラマと成果主義

ピアノやオーケストラと違って、歌曲や歌劇は、出力結果(聴いた効果)から成り立ちを推測するのが難しい。出力結果から遡行的に推定される成り立ち(そのパフォーマンスの存立構造)と、幸運な事例では完全ではないにしても経験的に検証できる来歴と、この…

ドイツ論のアップデート

浅田彰が父親からトーマス・マンのことを繰り返し聞かされたと回想しているが、没落したとされる教養主義やロマン主義へのノスタルジーとは違うしかたでドイツの文学を再インストールしないと不便な局面がこれから色々顕在化するかもしれない。ナショナリズ…

振り子時計

木曜9時のドラマを、さっきようやく録画で視た。レギュラー出演者が順番にお休みするのは、ギャラを節約して複数のゲストを登場させる苦肉のやりくりなのだろうか。広報部長がオチになって、最終章前に滑り込みで彼女にもスポットライトが当たる、これもや…

「ハイフィンガー奏法ですが何か?」

ユジャ・ワンのピアノ演奏は、そういう風に開き直っているように聞こえる。東アジアのクラシックにおける乱世の狼煙、という感じがします。(サンフランシスコ響の評は日経で既に出ました。)

脱KAJIMOTO

ルネ・マルタンは音楽におけるスティーヴ・ジョブズであり、「熱狂の日」音楽祭は、Apple の iPhone が日本のガラケーを駆逐したのに似た「いいグローバリズム」だ、という受け止め方があるようだが、彼が特定の音楽事務所と組んで開催するシステムになって…

老人と鎖国

「日本のオーケストラは40年間たえず上手くなり続けている。こんな素晴らしい国は他にない」という文言をSNSで見かけて、自分のなかで何かがプツンと切れた。クラシック音楽業界は、文壇と違って外国人の作曲家や演奏家と日常的に接触しているから原理的に「…

オーケストレーターの仕事

三浦秀秋 - Wikipediaくるり 岸田繁「交響曲第一番」 岸田氏とオーケストレーションを共同制作された三浦秀秋さんのツイートまとめ(追記あり) - Togetterまとめ今話題のキュレーションサイトですが、京響のコンサートのプログラムには、岸田繁がMIDIで作成…

鞭と拍車

カトリックの鞭と騎士道の拍車が結合したエリート教育、躾の形があるように思う。三島由紀夫や柴田南雄の育ち方を見ていると、日本のエリートにも鞭と拍車が注入されている印象がある。文化と暴力の問題としては、鉄拳制裁からヤンキー文化へ至る系譜と同じ…

西欧化・都市化・近代化

ポストモダンからカルスタ・ポスコロに進む議論のなかで、しばしば、「近代化を西欧化と混同してはいけない」と指摘された。日本(アジア)には日本の近代化があるはずだ、ということだと思う。それはいい。でも、そのようにブラッシュアップされた近代化論…

オルタナティヴ・クラシック:和樹とくるりと「ヒロシマ」と「KYOTO」、そして「ニッポン」と「日本」

先の京響のロームシアターの演奏会を、『「ヒロシマ」が鳴り響くとき』の能登原さんが聴きに来ていた。ロック・ミュージシャンの交響曲ということで、佐村河内から岸田繁へ、という流れを私は事前に漠然と考えていたので、なるほど彼女が来るのは筋が通って…

くるりのこと

これもロームシアターのツタヤで買った。ゼロ年代にかっこよくこのバンドを推した論客な方々の感想が知りたい。くるりのこと作者: くるり,宇野維正出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2016/09/16メディア: 単行本この商品を含むブログを見るロームシアターのコ…

Melodram と Melodrama

京都のロームシアターに早く着きすぎたのでツタヤに入ったらこの本があった。去年でていたようだが知らなかった。「メロドラマとは?」とあれこれ事典の記述を検討するのであれば新しいMGGは踏まえておくべきだろうと思うけれど、語りと音楽という演劇形式と…

管弦楽史のなかのマーラー

くるりの岸田の交響曲を聴いた夜に、明日の授業の準備(この調子だとまた徹夜)でアバドのルツェルンでの一連のマーラー(演奏もさることながらYouTubeにあがっている映像の出来映えが素晴らしい)を見る巡り合わせになっております。「文化史のなかのマーラ…

オルタナティヴを見届けようとしないポピュラー音楽学者たち

明日の演奏会の予習で、くるりをひたすら聴いている。Apple Music 大活躍、これまでの人生でこんなにたくさんロックを聞き続けるのは始めてである。ジュビリーはムーンリバーだ、とか、Let it be なカレーの歌とか、そういうのは、聴いたらすぐにわかるよう…

伸び悩み対策

井上道義は、京響が市の直営で、指揮者は2期6年まで、という暗黙の慣例があった時代に在任3期目に入ったことで市政を批判したい議会でやり玉に上げられて揉めた。逆風のなかでの8年だ。一方、広上淳一は、京響が財団化して人事を市の慣例から切り離すことが…

後追いによる自己満足

少し前のことだが、関西の歌手を何人か招いたオペラ公演を東京の評論家たちが聴いて「やっぱりイマイチだったね」と言い合う、というような出来事があったらしい。何が起きているかというと、なるほどその人たちはある時期関西でいい仕事をしていたのだが、…

高度成長世代は引退しない

トランプを論じるときに、どうして人々は社会階層の話ばかりして、彼が70歳の老人であることに着目しないのだろう。トランプが大統領に選ばれたことを日本に引きつけて考えるとしたら、高度成長期に育った70過ぎの老人のなかで引き際を考えない(考えられな…