松村佳子ピアノリサイタル

ザ・フェニックスホール。和音を崩したり、思い切ってテンポを揺らしたり、おそらく古い録音を聞き込んだと思われる様々なレトリックを取り入れていましたが、それは、澄んだ響きを作りたいという、神経過敏なくらいの音響的な配慮のようでした。

前半のショパン「マズルカ」ロ短調の最後に、空虚5度が会場を満たす瞬間や、ト短調のバラード、「アンダンテ・スピアナートと華麗なポロネーズ」のビロードのようなバスは、ひとつの成果。

ただ、厳しい音から逃げる、守り姿勢という気がします。バッハ「パルティータ」、ベートーヴェンのソナタop.110(どういうわけか、こういうタイプのピアニストに人気がある)は、どんな演奏になるのか、先が見えてしまって、あまり楽しめませんでした。