松村英臣ピアノリサイタル

夜、阿倍野区民センター小ホール。容赦なく打ち付ける和音、大きく翼を広げる旋律、ブレーキが効かず吹き荒れるパッセージワーク。楽譜の潜在な可能性をくっきり顕在化させて、最初のモーツァルト、イ短調ソナタは、どこに出しても通用する圧倒的な演奏でした。

ベートーヴェンのイ長調ソナタop.101は、対位法の処理で苦戦。シューベルトのイ短調ソナタD845は、亡霊のように希薄な感触が失われたのが残念。全体を一歩引いて俯瞰したり、姿が見えないものの気配を察知したりという表現の幅が加われば、本当に途方もないことになりそう。是非、そういう「最強のピアニスト」になって欲しいです。