ワシントン軍縮会議という教訓

指名されたみたいなので、何か書いてみます。(恒常的に、そんなことをしている場合ではない〆切状況ではあるのですが。)

http://wind.ap.teacup.com/lzfelt/2237.html

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私の名前が出て来た文脈がこの記事だけではわからないのですが……、

とりあえず、わたくしは、吹奏楽が今の日本で「生態系」として(規模がどれくらいなのかよくわからないのですが、外から見ていると立派な産業に見えるくらい華やかに)回っていることが、ほとんど奇跡のように凄いことだと思っています。

基本的に部外者なので、どこからどうアプローチしたら、その「中身」が見えるようになるのか、未だによくわからないので、イチビリみたいに手の付けられそうなところを引っ掻いているだけですが、きっと「中」に入ると、クラシック音楽とは随分違う「何か」が猛烈なスピードで動いているのだろう、と想像しています。

(たとえば丸谷先生のあのテンションは、そういう環境のなかにいるからこそなのだろう、と、わからないなりに思っています。)

そしてそのあたりを具体的にわたくしが書かないのは、本当のところどうなのか、ということを知らないからです。書かないのではなくて、そこは、わからないので、どなたかにお願いしたく思っております。

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で、これはあくまで部外者の推論にすぎませんが、吹奏楽が何かよくわからないけれど凄そうな環境なのだとしたら、一般論として、そんなところへ、今まで「市職員」として、行政のルールとシステムのなかで生活していた人がいきなり参入して、生き延びられるものなのだろうか、と心配になってしまいます。

よけいなおせっかいかもしれませんが、だから、わたくしが市音問題で一番気になるのは、市音の皆さんが「日本で最高水準のプロ奏者」であるとしても、その「演奏能力」だけを元手にやっていけるものなのかなあ、というところです。

わたくしは、「上手な演奏家」、「アマチュアの皆さんのお手本になれる先生たち」というだけでやっていける世界じゃないよ、と思っている人たちが、きっと吹奏楽の世界にいるのだろう、と想像していて、そういう方向から発言してくれる人がいたほうが、物事を立体的に考えることができるようになって、いいんじゃないのかなあ、と思っています。

だって、吹奏楽の世界は、基本、「体育会系/応援団系」じゃないですか。そして大阪市音は、元軍楽隊だといいますけれども、大阪の軍隊というのは、計算高くてすぐ逃げるから戦場で使えなかった、みたいな話がありますよね。この話が、大阪人好みのリップサービスである可能性はあるにしても……、市音は軍隊といっても「大阪の軍隊」の末裔なわけで……。

実際、第四師団軍楽隊のレコードなどのレパートリーは、東京の陸海軍とは随分雰囲気が違いますよね。そして大栗裕の「吹奏楽のための大阪俗謡による幻想曲」がお披露目されたのは、1974年のキダ・タローのプロデュースによるスペシャル・コンサートです。一番よく知られているのが春の甲子園における「今年のヒット曲」による入場行進曲だったりして、精鋭プロ集団(例えば東京佼成のような)というより、市音は、どこか面妖なところがあって、そこが「吹奏楽」のある種の特性にどっぷり浸かっている雰囲気を漂わせているように私には思えるのです。←もちろん誉め言葉です。

(大丈夫。市音の人たちだったら、大阪市に解雇されても引く手あまたに違いない、ということなんだったら、いいんですけれど……。あと、「これは上玉の出物だ」みたいに手ぐすね引いて待っている人が暗躍して、みたいなことも起きてくるのでしょうが、それは商売の世界はそういうものだから、いいのですけれど……。)

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ところで、それよりも私は、ワシントン軍縮が、日本の軍関係者にとって「つかの間の夢というよりは悪夢」だったというご指摘を興味深く読ませていただきました。

日本が軍縮に過剰反応して「選択と集中」に着手したものだから、諸外国は、こりゃ、やぶ蛇だと慌てた、という話ですよね。

外圧に過剰反応して国内が組み変わる、という光景は、まさに、今と同じではないか、と思いました。

「平成維新」とは、「軍縮」という一見バラ色の未来を約束するかのような皮を被った軍隊の極端な精鋭化の目論見である(不良国民は死ね、みたいな)と考えると、あの、青年将校な雰囲気に説明がつきそうな気がしました。「平成維新」は、明治維新を反復するというより、昭和維新の再来なんですね!

P. S.

本当に脈絡なくアホなことばかり思いついて恐縮なのですけれど、

たとえば、市音が「たかじんのそこまでいって委員会」に出て、出演者の皆さん相手にばっちりキャラを立てることができたりしたら、みんなが、「この人たちは大丈夫」と安心するんじゃないでしょうか。

出演者の誰かのバックバンドを務めたりして、テレビ的にウケる演奏ができたら、これは、すごいことになるのではないか? それをきっかけにタレントとして独り立ちするプレイヤーが出てきたりして……。

何かそういう、あっと驚くことをして欲しいです。

そういうのを起死回生というのではないかと。