音楽や音楽家の「再評価」を想像するときに、今まで見過ごされてきた特定の個人のランキングがいきなり赤丸急上昇する図を想像するのは、音楽というと、魅力的な「主旋律」があって、ドソミソとかブンチャッチャッの「リズム&伴奏」を従えるテクスチュアを自動的に思い浮かべるのに似ている。つまり、いままで伴奏パートしかやらせてもらえなかった人、あるいは、客席で音楽を聞くしかなかった人が舞台中央で「主旋律」の座をゲットするのが再評価という現象だ、という思考法。
何のためにポリフォニーの特訓をしているのだろう……。
歴史にも、複数のメンバーによるアンサンブルの魅力、あるいは、面や塊としてのサウンドの魅力に似たものがある。
あるいは、全体の大きな構図や流れのなかで、今までは上手く位置づけがみつからなかった人や現象を鍵となるポイントに位置づけなおすことができるようになったりする。
クラシック音楽好きを自認する人の歴史認識が、ブンチャッチャッのシートミュージック風であることは、必ずしも珍しいことではない。
特定の個人が、他人を踏みつけにしてその上に乗っかっている状態を夢想する発想の型は、ビルボード風ヒットチャート全盛時代を生きた人々を呪いのように縛る。
「一発当ててえよ〜」
なのかな。
ヒットチャートのギスギスをほぐす、クラシック界の湯川れい子はいなかったのかっ?
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ボエちゃん(ボエティウス)の名は「のだめカンタービレ」にも出てくるし、中世音楽論を音楽史の最初に概説するのは珍しいことではなくなっているけれど、ムシカ・ムンダーナを言うんだったら、歴史のムシカを話題にしてもいいのではないか。……というより、アドルノの新音楽信仰は、ほぼそういうことだったのではないか。ハルモニアのさらに先で、歴史が無調を奏でてる、みたいな。
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