ブレイン不在

読了。

大阪―大都市は国家を超えるか (中公新書)

大阪―大都市は国家を超えるか (中公新書)

個別の利害をそれぞれが代表して均衡・硬直してしまう議会では物事が動かないということ、そして円滑に物事を動かそうとすると市と府の関係あたりがネックになるということ、そういったダメだしは鮮やかだったし、実はそのあたりの構造的な問題は昭和のはじめごろからずっと大阪が抱えていたことでもある、ということを著者は丁寧に説明する。

で、じゃあ、どう物事を動かすか、というときに、理由の曖昧な支出はしない、という「納税者の論理」で色々なものを切る派手なアクションばかりが表に出て、先の見通しの立つ都市設計の構想や行動プランを組み立てるような「都市型官僚の論理」が弱い。大通りのライトアップとか、堀割をプールにする、とか、そういうショボイのしか出てこないのは、どうやら、まともなブレインがいないらしい、という結論になるのかもしれませんね。

「いい人がいないから公募します」といったって、そう簡単に人材が集まるはずもなく……、メンバーを揃えてから出直してこい、となるわけで。

(本書は、そんな「診断」まで踏み込んで書いてはいないけれど、提供された歴史的経緯と、都市行政を見る枠組みに照らすと、そういうことになりそうな気がします。)

でも、ダメだしの舌鋒だけが鋭くて、次にどう動くか、という見通しをちゃんと立てられないから足が止まる、という現象は、ここだけじゃないような気がしないでもない。

口先三寸では片付かないことが、あっちこっちに溜まっている、ということなのでしょう。

福島第一原発観光地化計画 思想地図β vol.4-2

福島第一原発観光地化計画 思想地図β vol.4-2

  • 作者: 東浩紀,開沼博,津田大介,速水健朗,藤村龍至,清水亮,梅沢和木,井出明,猪瀬直樹,堀江貴文,八谷和彦,八束はじめ,久田将義,駒崎弘樹,五十嵐太郎,渡邉英徳,石崎芳行,上田洋子
  • 出版社/メーカー: ゲンロン
  • 発売日: 2013/11/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログ (26件) を見る
だから、今は、とりあえずであれマスタープランを出すアクションが要るという勘は正しいのかもしれない。

丹下健三の仕事を踏まえての八束はじめとの対話が興味深い。大阪のステーションビルとか、最近は繁華街全体が70年の万博会場みたいになっている、というのは実感に合う。