「ああ君か、実はついさっきまでボクはね、絶世の美女と最高の時間を過ごしていたんだ。ほんの5分前まで、ちょうどいま君が座っているそこに、彼女はいたんだよ……」
彼の話は本当かもしれないし、作り話かもしれないが、彼の目は真剣で、今もまだ、その女性が目の前にいるかのようだ。そうか、この人についていけば、ボクもいつか、世界で最高に幸せな瞬間に出会うことができるかもしれない。いや、もしそんな幸運をつかむことができなかったとしても、彼の話を聞くだけでも十分にシアワセだ。いやあ、ボクは、なんてすばらしい友人を持ったのだろう。
……と思うかどうかは、きっとその人の性格によるのだろう。
そうしてそのうち、ボクもまた、他の誰かに「ああ君か……」と自慢する人生を歩むわけだ。
いやあ、芸術ってすばらしい。過ぎ去りし日々よ、お前は永遠に美しい!
(ワタクシは、自力であっちこっちほっつき歩いて、何か別のもの見つけるほうが楽しいと思うけどね。そして何かを見つけたとしても、それをあとから、「今はもう失われた過去」として他人に語るのは、なんだか、周囲に毒を振りまくみたいな気がして、ボクにはちょっとマネできないなあ。)
[……などとベラベラしゃべってるお前は、いったい誰だ(笑)。]