火消し

もしあれを定説として使い回しができる発見だと信じている人がいるといけないので、傷が深くならないうちにひとこと書いておく。

一般に、ふたつの作品に同じ音の並びが出てきたとしても、それだけではその2つの作品に「関係がある」と見ることはできない。偶然の一致や他人のそら似ではないと説得できるだけの傍証がいる、というのが現在の音楽(史)研究のほぼ共通了解だと思います。

まして調の並び(しかもそれを移調する)となると……、偶然の一致(というかコジツケ)の可能性が高く、研究者は取り合わないと思う。何か決定的な傍証が出てこないかぎりは……。(それにこの二人の作曲家が近い関係だったことは、論証の困難な類似に手を出すリスクを取らなくても、他に十分多くのデータがあり、それらをもとに考察を進めるほうが安全で確実だと思われるので……。)

その場にいた人たちへの「秘密のプレゼント」として彼が披露した話なので、その場にいた人たちがプレゼントをありがたくいただいて、胸の内に収めておくのがオトナのたしなみだと思います。「彼はそう思っていたんだな」というのは、あのシリーズの背景として語るかぎりでは、いいエピソードだと思いますし。