日本の学術博士はMagiなの?

「東方の三博士」と称されることが多い新約聖書の挿話を引き合いに出して、学術博士の称号を持つ大学教員が我が身の不遇を愚痴る風習がこの国の一部に認められるが、「エヴァ世代」でもある90年代量産型学術博士の皆さんは、マギという言葉をご存じないのだろうか?

The Magi (/ˈmædʒaɪ/ [1] or /ˈmeɪdʒaɪ/; Greek: μάγοι, magoi), also referred to as the (Three) Wise Men or (Three) Kings were, in the Gospel of Matthew and Christian tradition, a group of distinguished foreigners who visited Jesus after his birth, bearing gifts of gold, frankincense and myrrh.

Biblical Magi - Wikipedia, the free encyclopedia

英語が苦手な学術博士の皆さんは、日本語版をどうぞ(笑)。

アヴェスター語形マグ(magu, maγu)に由来し、ギリシャ語形の単数マゴス(μάγος)、複数マゴイ(μάγοι)を経由しラテン語化した。英語では単数メイガス(magus)、複数メイジャイ(magi)、形容詞メイジャン(magian)。普通名詞なので小文字始まりだが、東方三博士の意味では固有名詞あつかいで大文字始まりである。

マギ - Wikipedia

Doctorは随分違うところから出てきた言葉みたいだけどなあ。The Magi は賢者 The Wise Men と呼ばれることもあるらしいけど、この古代的で東方的な響きの言葉を、アカデミアやユニヴァーシティといった近世以後の制度から生まれた Doctor と言い換えうるものなのだろうか……。

Doctor, as a title, originates from the Latin word of the same spelling and meaning.[1] The word is originally an agentive noun of the Latin verb docēre [dɔˈkeːrɛ] 'to teach'. It has been used as an honored academic title for over a millennium in Europe, where it dates back to the rise of the first universities.

Doctor (title) - Wikipedia, the free encyclopedia

たまたま、両者に同じ「博士」の訳語が当てられているに過ぎず、昔、森喜朗が「日本は米の国、アメリカは米国、米つながりで仲良くしましょう」と米大統領に言ったとかいうエピソードが思い出されますが……、

あるいは逆に、「Doctorなどという西洋の世俗の称号は世を忍ぶ仮の姿。われこそはマギの末裔。今こそ人類補完計画じゃ、者ども続け!」みたいな擬史を生きていらっしゃるのでしょうか。

いずれにせよ、かつての森の派閥の御曹司が首相をつとめる国で「外部資金」を得ている博士の方々にふさわしい心温まる逸話なのかもしれませんね。

現役宗教の聖典を不用意に弄ぶとガフの扉がうっかり開いちゃったりしそうだが……。

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ちなみに、東方の三博士の話はメノッティがオペラにしており、「アマールと夜の訪問者 Amahl and the Night Visitors」での来訪者は3人の King だ(King Kaspar, King Melchior, King Balthazar)。

[結論として、この珍事の分析からわかるのは、粗製濫造の流れに乗って博士の肩書きを得た人たちのなかには、Doctorとして俗世の知のネットワークを泳ぐよりも、オリエンタルな王国・帝国の祭儀の司として安寧に終身雇用、という生き方に憧れとシンパシーを覚える人が少なくない、ということなのかもしれぬ。]