「現代の日本音楽」と大栗裕

大栗裕の作品目録は音楽劇(舞台作品)、演奏会音楽、放送音楽、というように発表媒体ごとに分類するとすっきりまとまる気がするのだが、大栗裕所蔵の録音については、発表媒体がより大きく広汎に流通したと考えられるものから順に並べようかと思う。

具体的には、放送された録音を最初に置いて、レコード製作がその次で、演奏会のライブ録音等はそのあとに置いてはどうか。「NHK大阪放送局制作 ラジオ・ミュージカル「待てど暮らせど物語」」とか「関西テレビ制作 報道取材番組「インドネシア」」とかのあとに「東芝EMI制作 赤い陣羽織 マスターテープ(複製)」が来て、「関西歌劇団第25回定期公演「飛鳥」[初演]」や「大阪市音楽団創立50周年記念演奏会」(「神話」の初演ライブ録音)はそのあとに回すということである。

ジョナサン・スターン流に、20世紀の hearing の文化においては「発生源と切り離されて操作・流通する効果としての sound」が決定的であった、というのを採用してみようじゃないか、ということである。

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そしてそのようにリストを作ってみると、

大栗裕はNHKラジオの「現代の日本音楽」という番組のために7つの作品を書いたことがわかっているのだが(参照 → http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20131006)、7つのうち5つの作品の録音が作曲者の手元に残っており、しかも、これらの録音は、放送局から放送用音源を受け取ったのではなく、実際の放送をエアチェックしたらしいことがわかる。

自分でエアチェックして、なおかつ、そのテープを他に流用せずに保管していたということである。

大栗裕は、放送のエアチェックのためにテープを何度も使い回しすることがあったのを踏まえると、これらの録音は特別扱いしていたと見てよさそうだ。

NHK大阪放送局とはドラマの仕事がほぼ切れ目なく続いているけれど、NHK音楽部門の全国放送で自作を発表するのは、やはり、特別なことだったのだと思う。

影響力の大きいメディアで流通したものから順にリストを作ると、「これだけの音楽が全国ネットで流れたのだぞ!」と故人を顕彰することになるので、やっぱりこれがいいんじゃないかと思うのである。