ベートーヴェンと石田純一

前の記事の補足だが、

ベートーヴェンがナポレオンに交響曲を献呈する計画を立てて、あとでそれを撤回したのは、「音楽による政治」というようなことではないと思う。

実際にそれをやったらどうなるか、可能性をおそらく具体的に水面下で探っていたのだろうけれど、そうこうするうちに当初の前提とは政治情勢が変わったから、なかったことにした、という話だ。

石田純一が、平素から色々自由にモノを言う人で、都知事選に立候補します、と華々しく宣言してすぐに撤回したのと似ている。

当時のウィーンの貴族たちから見たベートーヴェンは、カツラを付けない最新ファッションで態度がデカくて、尊敬する人はモーツァルト、とか言っちゃって、騒々しくチャラいわけだが、そこが珍しくて面白いとかわいがられたのだから、政治の駒としては石田純一みたいなものだろう。

そういえば、ベートーヴェンのライヴァルだったフンメルは、音楽家として盛りを過ぎた1848年の革命騒ぎで国民会議に担ぎ出されたわけだが、なんだかそんな感じのポジションの統一候補さんもいるようで……。東京は19世紀のウィーンに何かが似ているのでしょうか? 帝都の大日本帝国憲法は、伊藤博文がウィーンの法学者に教わって作ったそうですが。

伊藤博文―知の政治家 (中公新書)

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